自社養成パイロットになるには|ANA・JAL・LCCの応募資格・時期・訓練を比較

自社養成パイロットになるには|ANA・JAL・LCCの応募資格・時期・訓練を比較

この記事で分かること

対象 自社養成パイロットを本命・併願で考えている大学生(就活前後)
難易度 ★★☆(応募戦略づくり)
所要時間 約8分
読むと分かること ANA・JAL・LCCの選考時期・応募資格・訓練の違いと、「いつ・どこに・何を準備して出すか」の設計のしかた

はじめに

「自社養成なら、お金をかけずにパイロットになれるらしい」——そんな話を聞いて、少し希望が見えた人もいると思います。一方で、いざ調べ始めると「ANAとJALで何が違うの?」「いつ応募するの?」「そもそも受かるの?」と、分からないことが一気に増えて、手が止まってしまいがちです。

自社養成は、会社の訓練として資格取得を目指せる魅力的なルートです。ただし入口はいちばん狭く、しかも会社ごとに応募の時期も条件も違います。ここを知らずに「気づいたら募集が終わっていた」というのは、いちばんもったいないパターンです。

会社ごとの違いと応募の段取りを並べてみると、「自分はどこを本命に、どこを併願に、いつ何を準備するか」を考える材料が出てきます。次に確かめたいことを見つける手がかりとして、読んでもらえたらと思います。

私が受けたときにいちばん困ったのも、この情報の少なさでした。各社が公開しているのは募集要項と選考の大枠までで、試験そのものの中身は今も基本的に非公開です。だから私は、自社養成の受験情報を扱っているところで、過去にどんな試験があったのかを先に確かめておきました。あれはやっておいてよかったと思っています。とはいえ、そこにあるのは受験した人の記憶をたどった情報ですし、選考のやり方は年ごとに変わります。当てにいくというより、心の準備のために読んでいた、という感じでした。実際に受けてみると、聞いていたのとは違うところもありました。それでも、同じ試験を目指す人たちと、迷ったところや難しかったところを持ち寄れたのは、少なくとも私には大きかったです。ひとりで情報を抱え込む時間が、そのぶん減りました。

もうひとつ、いま思い返しても悔いが残っているのが英語です。準備を始めたのは試験の約8か月前でしたが、英語だけはもっと早く手をつけておけばよかった、と感じています。しかも求められる形は、私のころから変わりました。当時はTOEICのスコアがひとつの目安として語られていましたが、いまのANAグループは、FCATの英語試験を免除する条件をTOEIC L&R 785点かつS&W 310点というふうに、話す・書くまで含めた4技能で示しています。英語は、試験の日が近づいてから急に埋められる種類のものではありませんでした。そこは、もう少し早く気づきたかったです。

スカイ先生
スカイ先生
募集の時期を早めに知っているだけでも、準備に使える時間はずいぶん変わってくるよ。

結論(先に一言)

自社養成は会社が費用を負担する形の育成ルートです。そのぶん入口は最難関で、ANA・JAL・LCC(ここでは地域会社のAIRDOを例に)で、選考の時期・応募資格・訓練の進め方が大きく違います

そのなかでも最初に見ておきたいのが時期です。ANAグループは共通適性検査「FCAT」を入口に置き、JALは春先の短い期間に募集をかけます。行きたい会社の募集時期から逆算して予定を置いていくと、慌てずに動けます。

なお、「自社養成=訓練費は全額会社負担」と一律には言えません。会社によっては候補生が費用を分担する制度もあります。応募前に、募集要項で負担の範囲まで見ておきたいところです。

そもそも「自社養成」ってどういう仕組み?

自社養成とは、操縦ライセンスを持たない人を航空会社が採用し、入社後の訓練を通じて事業用操縦士・計器飛行証明などを取らせ、自社の副操縦士へ育てていく仕組みです。大学の操縦学科や航空大学校のように「入る前に自費で免許を取る」のとは、順番が逆になります。ここで出てくる事業用操縦士や計器飛行証明が何をするための資格なのかは、#3 自家用・事業用・定期運送用の違い で整理しています。

いちばんの魅力は、採用されれば給与を受けながら訓練に進めること。まとまった学費を先に用意しなくてよいのは、大きな安心材料です。

ただし、その裏返しとして入口はいちばん狭い。採用は数十人規模で、応募はそれを大きく上回ります。そのぶん、時期と条件をどれだけ早く把握しておくかで、動ける幅が変わってきます。

暁
先に免許、じゃなくて、入ってから育ててもらうんだね。

費用についてもうひとつ。「訓練費は全額会社負担」と思い込まないこと。たとえば地域会社のAIRDOは、訓練費を会社と候補生で分担する制度だと明記しています。ANA・JALについても負担の内訳が公式に示されていないことがあるので、応募前に募集要項まで見ておくと、あとで話が違ったということになりにくいです。

ANA・JAL・LCCの違いを比べてみる|時期・資格・訓練

募集時期・応募資格・訓練の進み方を並べると、こうなります(2026年8月時点の公表情報をもとにしています。募集は年度ごとに更新されるので、応募時は必ず各社の最新の募集要項をご確認ください)。

自社養成の会社別比較表。ANA・JAL・AIRDOを入口・選考時期・視力・英語・訓練中の身分の5項目で並べ、特に選考時期が会社ごとにずれていることを示す黒板図

▲ 入口・選考時期・訓練中の身分は、会社ごとに違います。視力や英語などの細目は、下の表で一社ずつ確認を。

項目 ANA(全日本空輸) JAL(日本航空) AIRDO(地域会社の例)
入口 ANAグループ共通適性検査「FCAT」に合格してから各社選考へ 自社独自の選考 FCAT合格が前提の候補生募集「Lakseløp」
選考時期の例 2028年入社向けFCATは2026年8月20日エントリー開始(グループ①締切9月15日) 2027年入社向けは2026年3月1日〜22日の短期間 2027年4月入社向けは2026年5月1日〜9月30日
学歴 学部・学科、文理を問わず挑戦可能と案内 全学部・全学科(高専専攻科を含む) 四大・大学院・短大・高専卒(見込含む)、社会人も可
視力の例 最終的に航空身体検査を含むFCATあり(年度別要項で確認) 各眼の矯正視力1.0以上(屈折−6.0〜+2.0D) 各眼の矯正視力0.7以上(両眼1.0以上に矯正でき、屈折−6.0〜+5.0D)
英語の例 FCATに英語試験を含む(一定の4技能スコアがあれば免除) 英会話試験あり(一定基準で免除の対象も) TOEIC750点程度以上、エントリー時にスコア提出
訓練中の身分・費用 入社後に訓練(負担内訳は年度別要項で確認) 正社員(試用3か月)/2027年度の月給例26.3万円 有期雇用契約社員/月給23万円・海外訓練手当あり。訓練費は会社と候補生で分担

表は横にスクロールできます。

こうして並べると、「同じ自社養成」でも中身がかなり違うのが分かります。特に選考時期はバラバラ。ANAグループのFCATは夏〜秋、JALは春先、AIRDOは初夏〜秋、というふうに山が分かれています。

暁
同じ「自社養成」なのに、いちばん最初に受ける試験からもう違うんだ。

※AIRDOは一般に地域航空会社として扱われ、厳密には典型的なLCCとは位置づけが少し異なります。ここでは「大手以外の自社養成の一例」として並べています。

そしてもうひとつ、表には収まらない共通点があります。ANAは「入社前に特別な知識や操縦資格は必要ない」と案内していますし、JALも学部・学科を問いません。専門知識を先に積んでおかないと入口にすら立てない、という世界ではないんですね。

私の実感も、そこは近いです。航空の知識は、飛行機が好きでよく見ていれば、おおよそ足りると思っています。それより効いてくるのは、自分がなぜ飛行機を好きになって、なぜその操縦席に座りたいのかを、聞かれたその場で懸命に語れるくらいまで、自分の中で描けているかどうか。まわりを見ても、そこに信念と覚悟がある人が、長い訓練を越えてパイロットになっていったなと思います。

モデルケースで「いつ・何を準備するか」を追体験

夏のFCATを本命に置く大地さんと、春から複数社を見ている陽菜さん。同じ大学3年でも、募集時期の見え方で動き方は変わります。

① ANAグループを本命にする 大地さん(大学3年)
夏にFCATのエントリーが始まると知り、6月のうちにマイページ登録と書類、英語の準備を前倒し。FCATは書類→英語→適性検査→グループワークと面接→身体・能力検査という5段階が数か月続くので、学業と両立できるよう早めにスケジュールを引きました。英語が2段階目に来ることを知って、いちばん先に手をつけたのも英語です。「FCAT合格=内定」ではなく、その先に各社の選考が待っている点も頭に入れています。

② 複数社を併願したい 陽菜さん(大学3年)
時期が分かれているのを利用して、春のJAL、夏〜秋のFCAT系を組み合わせる作戦。ただし会社ごとに視力や英語の基準が違うので、「自分がどの基準を満たせるか」を先にチェックしました。JALのように、事業用操縦士の免許を現在または過去に持っていると応募できない募集もあるため、条件は一社ずつ確認しています。

暁
募集が始まってから英語を詰めるんじゃ、たぶん間に合わないんだ。

気になる会社があるなら、募集ページを保存して、次のエントリー時期だけでもカレンダーに置いておくと、見失いにくくなります。会社ごとの山の違いも、そこから見え始めます。

選考で本当に見られていること

条件がそろってくると、次に気になってくるのが面接の中身だと思います。

私が受けた範囲でいうと、面接で見られていたのは「いつものあなた」に近いものでした。安全への向き合い方、約束を守る感覚、まわりと落ち着いて協力できるか。こうしたことは、話を掘られていくと、面接用に整えた言葉だけでは続かなくなります。逆に、日ごろの経験を自分の言葉で振り返れていると、話に具体性が出てきます。

何度も来たのは、「そのとき自分は何をしていたか」を聞く質問でした。学生時代に打ち込んだことを挙げると、そこからどんどん深く掘られていきます。何を見て、どう判断して、どの選択肢を選んだのか。そして、あとからそれをどう振り返ったのか。

印象に残っているのは、判断が正解だったかよりも、そのとき何を見て、どう考えたかを聞かれたことです。だから私は、うまくいった話も、そうでなかった話も、「どう判断して、なぜそれを選んで、どこを反省したか」を整理してから臨みました。それでも、深く聞かれると答えに詰まる場面はありました。ただ、判断の理由まで振り返っていたぶん、詰まったあとに言葉が出てくることは多かったです。

暁
正解を言い当てる場じゃない、ってことか。

英語や適性検査の対策はもちろん大切です。ただ、それと同じくらい、日々の生活で安全や約束をどう扱ってきたかを、自分の言葉にできることも準備のひとつになると感じています。

もうひとつ。面接のやり取りからは、長い訓練の途中で苦しくなったときのことまで想像されているように感じました。うまくいかない日をどう受け止めるか。気持ちが落ちたとき、誰に頼るか。同期や仲間がへこんでいるとき、自分はどう動くか。訓練は長く、思うようにいかない日もあります。元気に明るく前向きに、仲間と一緒に前へ進んでいけるか——そのあたりを自分の言葉でどう話すかは、私もその場でずいぶん考えました。

スカイ先生
スカイ先生
「いつもの自分」って、案外すぐには言葉にできないんだよね。困ったときの自分から思い出してみようか。

まとめ

今日のポイントを、もう一度。

  • 自社養成は会社が費用を負担する育成ルート。魅力は大きいが入口は最難関
  • ANA(FCAT経由)・JAL(春先の短い募集)・AIRDO(初夏〜秋)で、選考時期・資格・訓練が大きく違う
  • 時期が分かれているからこそ、逆算して準備すれば併願設計ができる
  • 「訓練費は全額会社負担」と決めつけない。負担・身分・不合格時の扱いは応募前に文書で確認。
  • 面接では、日ごろの経験を安全や約束への向き合い方と結びつけて話せるかも、準備のひとつになる。

まずは、気になる会社の次のエントリー時期を見てみるところから。本命はまだ決めきれていなくても構いません。募集の山を並べるところからで十分です。いま、いちばん先に日程を確かめたい会社はどこでしょうか?

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eVTOL時代ではどう変わるか

将来、eVTOL(電動垂直離着陸機・いわゆる「空飛ぶクルマ」)が広がれば、パイロットを採用・育成する会社の顔ぶれも、いまのエアラインだけではなくなっていくかもしれません。

その採用や訓練がどういう形になるかは、まだ見えないところが多いです。ただ、安全への向き合い方や英語、まわりと協力すること——いま自社養成の選考で問われている部分が、別の空の仕事につながる場面はありそうです。eVTOLのパイロットになる道が、いまどこまで形になっているのか。そこは #7 eVTOLパイロットになるには で扱っています。

30秒クイズ・考える問い

頭の整理に一問どうぞ。

Q. ANAグループの自社養成で、各社の選考の前に置かれている共通適性検査の名前は?

答えを見る **FCAT(Flight Crew Assessment Test)**=ANAグループ共通のパイロット適性検査です。書類・英語・適性・面接・身体検査などの段階があり、これに合格したうえで各社の選考に進みます。「FCAT合格=内定」ではなく、そのあとに各社の選考が続きます。

考える問い:あなたが本命にしたい会社の「次のエントリー開始日」は、いつでしょうか? 一度調べてみると、他社との時期の重なり方も見えてきます。

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  • 次に読む#19 航空大学校・私立大学の操縦学科・自社養成の違いを比較|費用・期間・入口で選ぶ進路
  • 関連:航空身体検査で見られること(視力・身体の基準を先に知っておく)
  • 関連:パイロットの英語、どこまで必要?(選考と訓練の土台)

スカイ先生(朝霧)プロフィール

本ブログは、10年間のパイロット経験を積み重ねてきた筆者が、「誰でも飛べる」をモットーに将来パイロットになりたい学生に向けて発信しています。

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