前回は、第3回国試対策として第二次世界大戦前に策定された3つの条約を取り上げました!
皆さんのいうように、
実は、戦後、日本でも重要な条約が制定されたんですよ!
では、今回は、日本で締結された条約に関してみていきましょう!
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本ブログは、10年間のパイロット経験を積み重ねてきた筆者が、「誰でも飛べる」をモットーに将来パイロットになりたい学生に向けて発信しています。
皆さんの多くは、将来、お客様を乗せて空を飛びたいと思っているのではないでしょうか?
ただ、皆さんが、自分の航空機にお客様を乗せて飛ぶ際には、機長として、ご搭乗のお客様の生命と財産を守る責任がでてきます。
そのためにも、機内で安全を阻害する行為に対しては、毅然とした態度で適切に処置していかなければなりません。
例えば、最近ではほとんどないですがハイジャックや危険物の所持がこれに当たりますね。
今回は、このようなハイジャックといった航空機内での犯罪や安全阻害行為に対応するための国際法規「東京条約」に関して取り上げようと思います!
それでは、早速、戦後この日本で締結された「東京条約」に関してみていきたいと思います!
東京条約とは?
東京条約は、1963年に採択された国際条約で、正式名称は「航空機内で行われた犯罪その他のある種の行為に関する条約」といいます。
この条約の主な目的は、国際航空における機内犯罪や安全阻害行為に対処することです。
航空機が国境を越えて飛行する特性上、どの国の法律が適用されるのか不明確な場合がありますよね。東京条約は、この問題に対する国際的な取り決めなのです。
日本は1970年、よど号ハイジャック事件を機にこの東京条約を批准(同意の意味)しました。
よど号ハイジャック事件に関しては、こちらを参考にしてみてください。
条約が適用される範囲
東京条約第1条1項には、条約の適用されるケースに関してざっくりとこのように書いています。
- 刑法上の犯罪
- 航空機や人や財産の安全を脅かす行為、機内の秩序を乱す行為
つまり、東京条約は、窃盗や暴行といった一般的な犯罪から、機内での迷惑行為まで幅広く対象となるということです。
残念ながらこのような、若干の問題点もある条約でした。
裁判権の原則 – 登録国主義
東京条約の大原則は「登録国主義」です。
つまり、航空機を登録した国が、その機内で起きた事件に対して裁判権を持つということです。/
例えば、日本の航空会社の飛行機内で起きた事件は、たとえその時アメリカの上空を飛んでいたとしても、基本的に日本の法律が適用されるのです。
これは船舶における「旗国主義」の考え方を航空機にも適用したものですね。
ちなみに、この登録国主義に関しては、東京条約の第三条に定められています。
航空機の登録国は、当該航空機内で行われた犯罪及び行為について裁判権を行使する権利を有する。
機内での犯罪行為に対する管轄権を明確にしたことは、東京条約の重要なポイントです。
裁判権の例外
先ほど、東京条約の大原則は「登録国主義」だと書いたばかりでですが、
一部の例外もあって、登録国以外の国でも、特定の条件下では裁判権を行使することもできます。
その具体的事例に関して、東京条約の第四条(a)から(e)に以下のようなことが定められています。
- 自国の領域に影響がある場合
- 自国民が関わる場合
- 自国の安全を脅かす場合
- 自国の航空法規に違反する場合
- 他の条約で裁判権の行使が義務付けられている場合
この規定により、事件の影響を受ける国も適切に対応できるようになっているんです。
原則は○○です、だたし「例外もありますよ」というスタンスになっていることが多いです。
これを、但し書き、と言います。
機長の権限
東京条約第六条では、機長に重要な権限を与えています。
(分かりやすさのため、条約の要点のみを記載します)
機長は、機内の安全や秩序を維持するために:
- 犯罪者や問題行動を取る乗客を拘束できる
- 拘束に際して、他の乗務員に援助を命じ、さらに他の乗客に援助協力を依頼できる
- 問題のある乗客を降機させることができる
コロナの時期に、マスクの着用を拒否したお客様を降機させた事例はこの「機長の権限」をもって実施されました。
このように、機長に絶大な権限が与えられた歴史的経緯には、東京条約の役割は大きく、今でも「機長の権限」の国際的な法的根拠になっていたりします。
これらの権限は、空の安全を守る機長の業務上、非常に重要なポイントですので、ぜひ原文(日本語訳付き)を見て理解を深めておいてください。
ハイジャック対策
1960年代にハイジャック事件が増加したことを受け、東京条約にはハイジャック対策も含まれています。
締約国は、不法に奪取された航空機の管理を機長に戻すため、あらゆる適切な措置を取ることが求められています。
飛行中の航空機内における
の者が暴力又は暴力による脅迫により当該航空機につき不法に干渉、奪取その他の不当な管理を行い又は行おうとしている場合には、 締約国は、当該航空機の管理をその適法な機長に回復させ又は維持させるため、あらゆる適当な措置をとる。
東京条約を適用とした有名な事例
それでは、実際に東京条約が適用となった事例を見ていきましょう。
よくテレビ番組でも取り上げられるので、皆さんの中にも「大韓航空機爆破事件」を知っている方も多いかもしれません。
この事件は、1987年、北朝鮮の秘密工作員が大韓航空の旅客機に爆弾を仕掛け、それを飛行中に爆発させたというものです。
乗っていた115人全員が亡くなりました。
事件発生後、工作員らは、バーレーン当局に拘束されましたが、この東京条約に基づいて、飛行機の持ち主国である韓国が裁判を行う権利を持ちました(登録国主義)。
その後、工作員の金賢姫は韓国で裁判を受け、最初は死刑を言い渡されましたが、後に許され釈放されました。
まとめ
皆さん、ここまでいかがだったでしょうか?多少レベルの高い内容だったかと思います。
それでは、今回の内容をまとめてみましょう。
今回の記事では、東京条約について以下の6つのポイントを解説しました:
- 東京条約の概要
- 条約の適用範囲
- 登録国主義の原則
- 裁判権の例外
- 機長の権限
- ハイジャック対策
将来、皆さんが国際線に乗務する中でこの東京条約を何度も振り返る場面が来るかと思います。
そして、今回の内容にもあった「安全阻害行為」や「機長の権限」に関しては、エアラインに入った後の機長昇格の際に何度も確認される点です。つまり重点ということですね。
繰り返しにはなりますが、今回の内容のような法規は、パイロットの運航に密接にかかわってくるルールなので、私たちの安全を守るために不可欠となります。
訓練生の皆さんは、今のうちに国際航空法規の基本をしっかりと学び、パイロットとしての知識を深めてみてください。
次回の記事では、今回の東京条約のあとに制定された「ハーグ条約」について詳しく解説していきますので、ぜひ見てくださいね!
お楽しみに!
それでは、また、次回。Good Day!
- 東京条約:正式名称は「航空機内で行われた犯罪その他のある種の行為に関する条約」。1963年に採択された国際航空法の基礎となる条約です。
- 登録国主義:航空機を登録した国が、その機内で起きた事件に対して裁判権を持つという原則のことです。
- 裁判権:ある事件や犯罪に対して、法的な判断を下す権限のことを指します。
- ハイジャック:航空機を不法に奪取する行為のことです。
最後に、皆さんにコメントをお待ちしております。
記事の内容でわからないことがあれば、どんなことでもコメント欄に書き込んでくださいね。コンプライアンスに引っかからないように、できる限りお答えします。皆さんとの交流を通じて、私も一緒に成長していけたら嬉しいです。よろしくお願いします!
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