2026年の空飛ぶクルマ最新情報|型式証明・万博・日本の商用化はどこまで

2026年の空飛ぶクルマ最新情報|型式証明・万博・日本の商用化はどこまで

この記事で分かること

対象 AAM/eVTOL業界の”今”を正確に知りたい志望者・若手
難易度 ★★☆(用語は本文で解説)
所要時間 約9分
読むと分かること 主要各社の型式証明の現在地/万博の実際/日本のロードマップ/退場した企業/ニュースの読み方

はじめに

「空飛ぶクルマ、もう実用化したの?」——そう思わせるニュースを、ここ数年、何度も見かけるようになりました。「大口の受注」「2028年に就航」「万博で飛んだ」。前に進んでいるように見える言葉が並ぶのに、いざ「じゃあ今どこまで来たの?」と聞かれると、うまく答えられない。そんな引っかかりが残ります。

情報が多いうえに、”目標”と”確定”が同じ温度で並ぶので、業界がいまどのあたりにいるのか、その現在地は見えにくくなります。

そこで、認証・万博での飛行・日本の商用化を分けながら、いま言えることと、まだ予定にとどまることを、いっしょにほどいていきます。「飛んだ」と「乗れる」は、同じ話ではありません。その境目のどこに立っているのかを、2026年9月時点で見ていきます。

将来この業界に関わりたい人ほど、機体の見た目や就航予定だけを見ていると、判断に迷う場面が出てきます。認証や運航、制度づくりのどこが動き、どこがまだ決まっていないのか——まずはそこを分けて眺めてみます。

結論(先に一言)

2026年の空飛ぶクルマ(AAM)は、「飛べることの実証」だけでは語りにくくなり、「安全基準への適合を当局に示す」「限られた環境で運航手順を積み上げる」といった認証・運航の準備が前面に出てきた年でした。ただし、各社が立っている地点はそれぞれ違います。派手な就航ニュースはあっても、西側(米欧日)の有人eVTOLで、型式証明を取り終えた機体はまだ1機もありません。唯一の例外が中国のEHangで、これは中国の当局(CAAC)の基準で先行しているものです。日本の商用運航については、政府が2027〜2028年から一部地域で、という目標を置いている段階です。

2026年、空飛ぶクルマはもう乗れる?

ここで押さえておきたいのが型式証明(TC)です。機体の設計が安全基準に適合していることを、国の航空当局が認める認証で、デモ飛行や試験飛行、受注の発表とは、そのまま結びつくものではありません。

2026年9月時点で、主要各社はこの認証をまだ持っていません。各社の到達点を並べてみます。

主要eVTOL各社の型式証明の進捗を並べた黒板図。Joby・Archer・BETA・Vertical・Eve・SkyDriveは審査中、EHangのみ中国CAACでTC・耐空・生産証明を取得済み。

▲ 米欧日の有人eVTOLはまだ型式証明ゼロ。EHangの先行は中国CAAC基準で、FAA・EASAとは同じ物差しでは比べにくい。

企業/機体 当局 2026年9月の到達点
Joby Aviation/S4 米FAA 5段階の最終ステージ5に進行(ただし受理は途中)。西側で最先行
Archer/Midnight 米FAA 4フェーズ中のフェーズ4(適合の実証段階)
BETA/ALIA 米FAA まず固定翼版を先行認証する戦略。VTOL版は2027年後半〜2028目標
EHang/EH216-S 中国CAAC 型式証明・量産・耐空証明を取得済。中国で無操縦の有人運航段階
Vertical(英)・Eve(伯)・SkyDrive(日) 各国当局 いずれも審査中。TC取得はこれから

「最終ステージに入った」と聞くと、認証まで済んだようにも聞こえます。けれど、そこにはまだ距離があります。Joby自身の開示でも、最終段階の審査は途中です。「もうすぐ」と「もう取れた」の間には、思っているより長い審査が残っていることもあります。

eVTOLの発表を読むとき、私がとくに慎重に見るのが「受注」という言葉です。それが確定した契約なのか、条件つきの合意なのか、それとも会社側の目標なのか——同じ「受注」でも、確かさには段階があります。就航の時期も、多くは各社が”目標”として掲げているもので、現状、ほとんどのメーカーで後ろ倒しになっています。「大口の受注」「2028年に就航」といった発表が、確定した契約なのか、それとも目標なのか。そこは見出しだけでは測りきれないことが多い、というのが私の実感です。

補足:「受注」は目標か確定か——LOI/MOUと確定契約は違う

「◯◯機を受注」の多くは、LOI(意向表明)やMOU(覚書)といった「買いたい」という意思表示の段階で、正式に確定した売買契約とは別モノです。数字の大きさより、「これは確定? それとも目標や意向?」を先に確かめると、発表の本当の重みが見えてきます。

この章の要点

  • 型式証明(TC)は「設計が安全基準を満たす」と当局が認める合格証。デモ飛行や受注とは別物。
  • 2026年9月時点、西側(米欧日)の有人eVTOLはTCをまだ取り終えていない(Joby最終段階/Archerフェーズ4)。
  • EHangは中国CAACで取得済みだが、自律・短距離・中国基準という前提つき。
  • 「受注」「就航」は、確定か目標かを分けて読む。

💬スカイ(まじめ):「世界初で認証されたなら、もう日本やアメリカでも乗れるの?」——そう思いますよね。でもEHangは中国CAAC基準の自律飛行タイプ。米欧の有人eVTOLとは、別のルールで見ておくのが安全です。

スカイ先生
スカイ先生
「“世界初で認証”って聞くと、もう日本でも乗れそうに思えるんだよな……。でも、その認証って、どの国の、どんな飛び方を前提にした話なんだろう?」

万博で「空飛ぶクルマ」は飛んだ。でも……

2025年の大阪・関西万博。「空飛ぶクルマが飛ぶ」と話題になりましたが、実際はどうだったのでしょうか。

行われたのは、乗客を乗せない”デモ飛行”や展示でした。一般のお客さんを乗せた商用運航には、まだ距離があります。

大阪・関西万博でのeVTOLデモ実績をまとめた黒板図。丸紅HEXA23回・SkyDrive17回のデモ飛行、ANA×Jobyは公開飛行デモ、JAL・住友商事陣営は展示中心。

▲ 行われたのは乗客なしのデモ・展示で、旅客を乗せた商用運航はまだ実施されていない。

  • 丸紅(HEXA機):合計23回のデモ飛行
  • SkyDrive:合計17回のデモ飛行
  • ANAホールディングス×Joby(S4):公開飛行デモを実施
  • JAL・住友商事陣営:予定していたデモ飛行を断念し、展示中心に

つまり「万博で空飛ぶクルマが飛んだ」は本当ですが、「万博で商用運航が始まった」「来場者を乗せる旅客サービスが実現した」は誤りです。デモ飛行で見えたのは、「飛べる」という一面です。そこから、旅客を乗せて続けられる商用運航に移れるかどうかは、また別の条件にかかっています。

💬スカイ(笑顔):ここは勘違いされやすいところ。”飛んだ”と”事業として就航した”は、分けて見ておくと、万博の意味がつかみやすくなりますよ。

スカイ先生
スカイ先生
「会場で飛ぶところを見たら、“もう乗れる”って思っちゃいそう。……でも、飛んだのにお客さんを乗せなかったのは、なんでなんだろう?」

日本では、いつ乗れるようになる?

日本の見通しについては、2026年3月に新しい動きがありました。国土交通省と経済産業省の「空の移動革命に向けた官民協議会」が、ロードマップを改訂したのです。

日本のAAMロードマップを示す黒板図。2027/2028年に一部地域で商用運航開始、2030年代前半に遠隔操縦、後半に自動・自律運航の一部実現という時間軸。

▲ ロードマップは行政と産業の共通目標。申請・受理はスタートライン。

最大の変更は、これまで曖昧だった商用運航の開始時期を、「2027/2028年から一部地域で商用運航開始」と初めて明記したこと。さらにその先は、

  • 2030年代前半:新しい交通管理や、遠隔操縦による旅客輸送の導入
  • 2030年代後半:自動・自律運航の一部実現

という順で描かれています。

ただしこれは行政と産業の”共通目標”であって、全国いっせいの就航を約束するものではありません。実際に乗れるようになるには、機体ごとの型式証明、離着陸場、空域や通信の整備、自治体との調整など、いくつもの条件が同時に動くことになります。

なおSkyDriveは2026年3月に航空局(JCAB)と審査の進め方(全般計画書)で合意し、Archer Midnightも2026年8月に国交省が型式証明の申請を受理しました。どちらも「審査を進める段階」であって、就航の許可ではありません。

⚠ 注意:申請の受理=就航の許可ではありません

型式証明の申請が受理されても、それは審査のスタートラインに立ったという意味です。就航が近づいた合図ではなく、本番の審査や当局との調整は、むしろここから始まります。

申請の受理は、たしかに前進の一つです。ただ、受理はあくまで「審査に入る」段階で、その先には、設計資料をそろえ、試験を重ね、当局と確認を往復する工程が続きます。むしろ、そのあとの工程のほうが長いこともあります。だから申請や受理のニュースだけでは、そこから認証までの距離まではまだ測りにくい、というくらいで受け止めておくと、実態とずれにくくなります。

生き残った会社、消えた会社

各社の進捗を並べてみると、飛行試験の発表だけでは見えてこない動きが混ざってきます。以前よく名前を見かけた会社でも、破綻や統合、方針転換で、いまの姿が変わっていることがあります。

退場・再編したeVTOL企業の現況をまとめた黒板図。Liliumは再破綻、Overairの特許はArcherへ、VolocopterはDiamond社へ統合、Supernalは停止後に再始動準備、CityAirbusは一時停止。

▲ 顔ぶれは短い間にも変わる。以前の記事を読むときは、公開情報の時点を確かめたい。

会社 2026年9月の状態
Lilium(独) 2025年2月に再度の経営破綻。事業停止
Overair(米) 資金を失い事業終了。特許の一部はArcherへ
Volocopter(独) 破綻後、Diamond Aircraft社(中国 Wanfeng 傘下)に統合
Supernal(現代自動車系) 2025年に開発停止。その後、再始動の準備段階と報道
Airbus CityAirbus NextGen 開発を一時停止(電池の成熟度不足を理由に)

開発や認証、量産準備の発表を続けているのは、Joby、Archer、BETA、EHang、Vertical、Eve、そして日本のSkyDriveなど。とはいえ各社とも、就航予定はたびたび後ろ倒しになっています。表に並ぶ日付も、確定日というより、その会社がいま置いている目標日と見ておくほうが、実態に近いかもしれません。

「そんなに遅れるものなの?」と思うかもしれませんが、航空の世界では、そう珍しいことではありません。大型旅客機を長年つくってきたボーイングでさえ、従来型の機体で予定を大きく超えることがあります。ましてeVTOLは、認証するためのルール自体が、これまで存在しませんでした。だからいまは、メーカーと当局が一緒にルールをつくりながら審査を進めています。さきほどのSkyDriveの「全般計画書」も、その共同作業の入口でした。

この章の要点

  • Lilium・Overair・Volocopter・Supernal・CityAirbusは、破綻・事業終了・凍結・再編で退場した。
  • 前に進んでいるのはJoby/Archer/BETA/EHang/Vertical/Eve/SkyDriveなど。
  • ただし就航予定は各社ともたびたび後ろ倒し。日付は「〜目標」として読む。
  • 業界地図は四半期ごとに描き直すつもりで、定期的に見直す。

💬スカイ(まじめ):「去年よく聞いた会社なのに、今年は名前を見ないな」——そんな会社もあります。eVTOLは認証まで時間もお金もかかるので、開発の途中で再編や停止が起きることもあるんです。

もっとも、遅れる理由を一つに決めるのは難しいところです。飛行試験なのか、認証資料なのか、量産なのか、資金なのか——会社ごとに事情は違います。だから「遅れている」という一言も、何が遅れているのかを分けて見ると、意味が変わってきます。

スカイ先生
スカイ先生
「去年ニュースでよく見た会社が、今年はぱったり名前を聞かないな……。“飛べるか”とは別に、認証までたどり着けるか、っていう勝負もあるのかも。」

まとめ

ニュースを追っていて迷いやすい点を、最後に5つだけ残しておきます。

  • 2026年、西側の有人eVTOLはまだ型式証明ゼロ(Joby最終段階・Archerフェーズ4)。
  • 例外はEHang(中国CAAC基準・自律・短距離)で、FAA/EASAの型式証明とは前提が別。
  • 2025年万博は”デモ飛行”まで。旅客を乗せる商用運航には届いていない。
  • 日本の商用は政府目標で2027/2028年から一部地域。全国就航が決まったわけではない。
  • Lilium・Overair・Volocopter・Supernal・CityAirbusは、破綻・統合・停止・再始動準備と、会社ごとに状況が動いている。以前の記事を読むときは、公開情報の時点を確かめたい。

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eVTOL時代ではどう変わるか

商用運航が広く始まる時期は、まだ読みにくい段階です。ただ、制度も機体も固まりきっていない今だからこそ、それがどう決まっていくのかを、途中から追える面はあります。アメリカではpowered-liftという操縦資格の枠組みが動き始め、日本でも2027/2028年の目標に向けて、制度や運航の準備が議論されています。とはいえ、実務の姿がはっきりするのは、もう少し先になりそうです。

正直なところ、「eVTOLのパイロットになるには何をすればいいか」を、いまひとつに決めるのは、なかなか難しいところです。だからこそ、飛行の基礎を学びながら、認証や運航、制度がどう動くのかも横目で追っておく——その両方を、あわてずに続けられる時期でもあります。

30秒クイズ・考える問い

Q. 2026年9月時点で、有人eVTOLの型式証明を取得しているのは次のうちどれ?

A. アメリカのJoby / B. 日本のSkyDrive / C. 中国のEHang

・・・

答えは C. 中国のEHang(EH216-S)。ただし中国の基準(CAAC)・自律飛行・短距離が前提で、FAAやEASAの有人機の型式証明とは別モノです。JobyやSkyDriveは、まだ審査の途中です。

考える問い:今日見た「2028年に就航」は、誰が置いた目標でしょう。メーカーなのか、運航会社なのか、それとも自治体や当局なのか——主語が変わると、その日付の重さも少し変わってきます。

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業界の全体像がつかめたら、次は個別の機体やしくみを見てみましょう。

  • 次に読む:空飛ぶクルマの仕組みを図解|マルチコプタ・リフト+クルーズ・チルトの違い#201
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スカイ先生(朝霧)プロフィール

本ブログは、10年間のパイロット経験を積み重ねてきた筆者が、「誰でも飛べる」をモットーに将来パイロットになりたい学生に向けて発信しています。

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