
Contents
航空用語辞典|パイロット志望者・訓練生が最初に覚えたい用語を分野別に整理
この記事で分かること
| 対象 | パイロット志望者・訓練生(教材や動画で用語につまずく初学者) |
| 難易度 | ★☆☆(用語の入門) |
| 所要時間 | 約9分(辞典として拾い読みもOK) |
| 読むと分かること | VFR・IFR・METAR・技能証明など頻出の航空用語を分野別に。まず覚えたい基本語と、間違えやすいポイント |
はじめに
教材を開いても、動画を見ても、見学に行っても——「VFR」「メーター(METAR)」「スコーク」といった言葉が当たり前のように飛び交っていて、意味が取れずに置いていかれる感覚。パイロットを目指し始めたころ、私自身も一度は味わった戸惑いです。
私の場合、いちばん面食らったのは教材よりも、まわりの人の会話のほうでした。訓練を始めると、子どものころから飛行機を見て、乗って、調べてきた人たちがそばにいます。機体ごとの特徴、乗ったときの感想、どこが好きか。ATC(航空管制)の交信を聞き込んでいる人までいて、知識の量に圧倒されて黙ってしまう時期がありました。
抜け出せたきっかけは、大げさなことではありません。知らない言葉が出たらその場で聞く、あとで自分でも調べ直す——それを繰り返しただけです。詳しい仲間のそばにいるだけでも、耳に入る言葉は増えていきました。用語は机で一気に暗記するより、会話で拾って一つずつ埋めるほうが、結局は早く身についた気がします。
まわりに詳しい人がいない場合でも、やることは変わりません。用語が分からないままだと、内容そのものがなかなか頭に入ってきません。逆に言葉が通りはじめると、同じ教材でも拾えるものが増えていきます。航空用語は、分野ごとに並べて、頻出のものから見ておくと、教材や交信で出会ったときに戻りやすくなります。
ここでは、初学者がまずつまずく用語を「基本/空域・管制・無線/機体・計器・運航/気象・資格・訓練」の分野に分けて整理しました。上から順に読んでもいいですし、気になった言葉だけ拾い読みしても構いません。手元に置いて、分からない言葉が出てきたら戻ってくる——そんな使い方もできます。

結論(先に一言)
航空用語は「略語は正式名とセットで見る」「似ているけれど別物の言葉を並べておく」——この2つを意識しておくと、あとで調べ直すときに楽になります。
たとえば、VFRとIFRは「飛行方式」、VMCとIMCは「気象状態」で、まったく別のもの。ILSは地上の装置で、自動着陸とは別物。こうした「取り違えやすいペア」を並べて見ておくと、教材を読むときの迷いが減ります。
分野ごとに、気になったところから見てみてください。
まず覚えたい、いちばん基本の用語
教材や動画で早い段階から見かけやすい、基本の用語です。まずは「どの分野の話か」がつかめれば、それだけでも読み進めやすくなります。

▲ 略語は正式名とセットで。VFR/IFR は「飛行方式」、VMC/IMC は「気象状態」と組で分けておくと、あとで混ざりにくくなります。
| 用語 | 正式名(英/日)と意味 | ここに注意 |
|---|---|---|
| VFR | Visual Flight Rules/有視界飛行方式。外の景色を見ながら、操縦者の判断を基本に飛ぶ方式。 | 「管制と無関係」ではありません。管制圏などでは必要な指示に従います。 |
| IFR | Instrument Flight Rules/計器飛行方式。計器を主な基準に、承認された経路・高度・管制指示に従って飛ぶ方式。 | 「IFR=悪天候・IMC」は誤り。IFRは”方式”、IMCは”気象状態”です。 |
| 管制圏 | 正式には航空交通管制圏(Air Traffic Control Zone)。離着陸が多い空港周辺で、大臣が指定する空域。 | 飛ぶには無線連絡や管制上の手続きが必要になります。 |
| METAR/TAF | METAR=飛行場定時気象報(実況)/TAF=飛行場予報(予報)。 | METARは”今の実況”、TAFは”これからの予報”。ここが基本の区別です。 |
| PIC | Pilot in Command/機長。その飛行について最終的な責任を持つ操縦者。 | 「操縦桿を握っている人」という意味ではありません。実際に操縦している人(PF)とは別に決まります。 |
| 技能証明 | 航空従事者技能証明。国が「必要な知識・能力がある」と認めて与える国家資格(航空法)。 | 「免許」とも呼ばれますが、制度上の正式語は”技能証明”です。 |
表は横にスクロールできます。
表は横にスクロールできます。

空域・管制・無線の用語
空のどこを飛ぶか、誰とやりとりするかに関わる用語です。無線の教材や管制交信を聞き始めたときに、見かけることが多い言葉でもあります。

▲ どちらも飛行場のまわりの空域です。管制圏は「許可・指示」、情報圏は「情報提供」が中心と見ると、表の4語も置き場所が決まります。
| 用語 | 正式名(英/日)と意味 | ここに注意 |
|---|---|---|
| 情報圏 | 正式には航空交通情報圏(Air Traffic Information Zone)。管制圏が置かれていない飛行場の周辺で、安全のために交通情報が提供される空域。 | 管制圏と違い、原則は「指示」ではなく「情報提供」が中心です。ただし無線が任意という意味ではなく、情報を受け取るために連絡すること自体が求められます。 |
| ATIS | Automatic Terminal Information Service/飛行場情報放送業務。滑走路・進入方式・気象などを繰り返し放送する業務。 | 「装置」ではなく”業務”。放送にはInformation Alphaのような識別符号が付き、最初の交信で「どの版を聞いたか」を伝えます。 |
| NOTAM | ノータム。施設や方式の変更・危険などを、時機を逃さず知らせる航空情報。 | 単なる「お知らせ」ではなく、運航に必要な時機性の高い情報です。英語の展開はFAAがNotice to Air Missions、ICAOや日本では従来のNotice to Airmenも残るので、まずは「NOTAM」で覚えて大丈夫。 |
| スコーク | Squawk/トランスポンダに管制指定の4桁コードを設定すること、またはそのコード。 | 「トランスポンダ本体」の意味ではありません。設定する”行為・コード”を指します。7700(緊急)のように、あらかじめ決められたコードもあります。 |
表は横にスクロールできます。
無線を前にすると、「自分の番になったら言葉が出てこなそう」と感じることがあるかもしれません。実際には、何度も出てくる定型句があって、聞いているうちに少しずつ耳に残っていきます。

耳ならしの道具としては、LiveATCという実際の管制交信を聞けるサービスがあります。ブラウザで聞くぶんには無料です(公式スマホアプリは買い切りの有料で、似た名前の別アプリも多いので提供元だけ確かめてください)。日本では羽田・成田・伊丹などが配信されていますが、ボランティアの受信機に頼っている仕組みなので、聞ける空港は時期によって変わります。
⚠ 注意:電波法のきまり
聞き方には、ひとつ決まりごとがあります。自分の勉強のために聞くのは問題ありませんが、電波法では、聞き取った交信の内容やその存在を他人に漏らすこと、自分の利益のために使うことが禁じられています。録音をSNSに上げる、便名を挙げて実況する。そこだけは外さないように気をつけています。
私が訓練生のころは、有名な空港の周波数を選んで、これを流しっぱなしにしていました。本物は教材の例文よりずっと速くて短い。それでも同じ言い回しが何度も出てくるので、「この場面ではこう言うのか」が耳から入ってきます。ぜんぶ聞き取れた気になる日と、まるで歯が立たない日が交互に来る——そんな進み方でした。聞き慣れてきたころ、短い定型句を仲間と声に出してみたこともあります。聞くのと言うのは、やっぱり別ものでした。
機体・計器・運航の用語
着陸や高度計まわりで、よく出てくる用語です。取り違えやすいものが多いので、意味をセットで並べています。
| 用語 | 正式名(英/日)と意味 | ここに注意 |
|---|---|---|
| ILS | Instrument Landing System/計器着陸装置。滑走路への左右のズレ(ローカライザー)と降下経路(グライドスロープ)を示す地上の無線施設。 | 「自動着陸装置」ではありません。オートランドの可否は機体・空港・承認しだいです。 |
| ゴーアラウンド(復行) | Go-around/復行。着陸進入をやめて上昇し、やり直しや待機など次の行動へ移る操作。 | 「着陸失敗」ではなく、安全のために訓練される”正常な判断”です。 |
| QNH | 海面更正気圧。設定すると高度計がその地点の標高を示す気圧値(標準は1013.2hPa)。 | 「海面気圧そのもの」と同一視しないこと。高度計を合わせるための値です。 |
| QFE | 飛行場標高面気圧。設定すると、その飛行場の基準面でゼロを示す気圧値。 | 日本の一般的な民間運航では、ふだんはQNHが基本です。 |
表は横にスクロールできます。

気象・資格・訓練の用語
試験勉強でよく出会う、気象と資格の用語です。ここは制度に関わるぶん、言葉の輪郭もはっきりしています。
| 用語 | 正式名(英/日)と意味 | ここに注意 |
|---|---|---|
| METAR | 飛行場定時気象報。ある飛行場の”実際の気象”を世界共通の略号で表す観測報。 | 予報ではなく”実況・観測値”です。 |
| TAF | 飛行場予報。特定の飛行場について一定期間の予想気象を定型で示す予報。 | 運航のための定型予報で、代替飛行場や燃料計画の判断に使います。 |
| 副操縦士 | Co-pilot/First Officer。機長を補佐し、分担して操縦・運航業務を行う乗員。 | 「副操縦士」という独立した資格があるわけではありません。 |
| 事業用操縦士 | Commercial Pilot。報酬を受ける運航などができる資格。 | 「商業飛行なら何でも機長でできる」わけではない点に注意。 |
| 定期運送用操縦士 | Airline Transport Pilot(ATPL)。定期便の機長に必要な、操縦士資格の最上位。 | 資格だけで任命されるわけではなく、型式限定や会社の審査も必要です。 |
表は横にスクロールできます。

まとめ
今日のポイントを、もう一度だけ。
要点まとめ
- 航空用語は分野ごと・頻出のものから押さえると、教材と交信で拾える言葉が増えていく。
- 略語は正式名とセットで覚える(例:技能証明、ILS=計器着陸装置)。
- 似て非なるペアを区別する:VFR/IFR(飛行方式)とVMC/IMC(気象状態)、ILSとオートランド、復行(ゴーアラウンド)と進入復行(ミスドアプローチ)。
- まず覚えたい基本は「VFR/IFR・管制圏・METAR/TAF・PIC・技能証明」の5つ。
分からない言葉が出てきたら、このページに戻ってきてください。用語で止まりそうなときの確認用として、ここに置いてあります。今日のなかで、いちばん引っかかった用語はどれでしたか?
Twitter(@ASK_PILOT_ASAP)、TikTok(@tobuzo30000ft)、BLOG(コックピットの記憶)
eVTOL時代ではどう変わるか
最後に、これから増えていく新しい用語も一つ。
- eVTOL:electric Vertical Take-Off and Landing aircraft/電動垂直離着陸機。電気で動き、滑走路に頼らず垂直に離着陸できるよう設計された航空機の総称です。
⚠ 注意:eVTOLは法律用語ではない
注意したいのは、eVTOLは日本の航空法で決まった独立の区分・法律用語ではなく、技術・産業のうえでの”総称”だということ。ニュースでよく聞く「空飛ぶクルマ」とも、完全に同じ意味と言い切らないほうが安全です(国は「空飛ぶクルマ」を、電動化・自動化・垂直離着陸などで実現する次世代の移動手段として説明しています)。
ここまでの基本の用語は、こうした新しい空でも土台のまま使われます。eVTOLのニュースでも、空域・気象・資格・運航といった基本の言葉は何度も出てきます。気になった新語に出会ったら、そのつど一つずつ確かめていく——そこはこれからも変わらなさそうです。
30秒クイズ・考える問い
一問だけどうぞ。取り違えたまま進みやすいところです。
Q. 「IFR」と「IMC」の違いを、一言で説明できますか?
答えを見る
**IFR=計器飛行”方式”(飛び方のルール)/IMC=計器気象”状態”(外が見えにくい気象のこと)**。IFRは操縦のやり方、IMCは天気の状態で、まったく別物です。同じように、VFRとVMCも「方式」と「状態」の関係になっています。考える問い:今日の用語のなかで、「実は意味を取り違えていた」ものはありましたか? 一つでも「あ、これは別の意味だった」と気づければ、次に教材を開いたときの見え方が、少し変わるかもしれません。
次に読む・関連記事
用語の土台ができたら、次は使う場面ごとに深めていくのがおすすめです。

本ブログは、10年間のパイロット経験を積み重ねてきた筆者が、「誰でも飛べる」をモットーに将来パイロットになりたい学生に向けて発信しています。
今後も、パイロットのことに関して定期的にブログで発信していきますので、更新通知を受け取ってくださる方は、ぜひメールアドレスを登録してください。
また、何かご質問がございましたら、TwitterやインスタのDM、お問い合わせ欄からのご連絡もお待ちしております。

