私大操縦学科とは?5校の学費・資格・進路を比較【法政は募集停止】

この記事で分かること

対象 パイロットを目指す高校生・受験生と保護者
難易度 ★★☆(進路を比較して選びたい人向け)
所要時間 約9分
読むと分かること ①主要5校の資格・費用・定員・進路・入試の違い ②国内一貫/米国留学/専門学校の選び方 ③法政大の最新状況(募集停止)

はじめに

パイロットになる道の一つに、「大学や専門学校の操縦課程で学ぶ」という選択肢があります。東海大学、崇城大学、桜美林大学、そして専門学校の日本航空大学校……名前を挙げていくと、思ったよりたくさんあって、「結局どこがいいの?」と迷ってしまいますよね。

しかも調べていくと、学費が数百万から三千万円台まで幅があったり、訓練を国内でやる学校と米国でやる学校があったり。さらに、以前は候補に挙がっていた法政大学の情報が、古いまま残っていることもあります。表面の数字だけでは、なかなか比べにくいところがあります。

そこで、主要5校を費用・定員・訓練地・入試という同じ物差しで並べてみます。国内で学ぶか、米国での訓練も選択肢に入れるか、大学と専門学校のどちらから考えるか。あわせて、古い比較記事にはまだ候補として載っていることもある法政大学の、いまの募集状況も確かめます。

高校2年生の西風さんも、「操縦学科なら、どこでも同じでしょ」と思っていました。でも並べてみると、費用も訓練の場所もずいぶん違う。今日は、その西風さんと一緒に、一校ずつ確かめていきます。

結論(先に一言)

私立大学や専門学校の操縦課程は、「卒業までに事業用操縦士と計器飛行証明を目指す」という点は共通です。でも、費用(およそ1,150万〜3,150万円+α)、訓練の場所(国内でやるか米国でやるか)、定員、入試のしくみは、学校ごとに大きく違います。

そして、以前は候補に挙がっていた法政大学は、2026年時点で新入生の募集を停止し、廃止が決まっています。そのため、これから出願先を考える場合は、いま募集している学校を比較の中心に置くことになります。なお、操縦士になる道は私大だけではありません。航空大学校・私大・自社養成の3ルートを費用と入口の広さで並べたのが「航空大学校・私大操縦学科・自社養成の違いを比較」(#19)で、この記事は、そのうち私大の枠を1校ずつ開いたものです。

私大の操縦学科を比べるときの見取り図。めざす資格(事業用操縦士+計器飛行証明)はどの課程もほぼ共通で、違いが出るのは①訓練の場所②費用③定員と選抜④卒業後の進路の4つ

▲ 資格ではなく、場所・費用・人数・卒業後を同じ順番で並べると、比べる抜けが減る。

5校をひと目で比較|早見表

各校のパンフレットは資格の書き方がそれぞれ違うので、「学校によってゴールも違うのかな」と見えることがあります。ただ、事業用操縦士と計器飛行証明を目指すという大枠は、どの課程にも共通しています(この2つがそれぞれ何を指すのかは「自家用・事業用・定期運送用操縦士の違いとは?」(#3)で整理しています)。違って見えるのは、FAAの資格を先に取るか、日本の資格を並行して取るかという順番と表記の差です。免許・限定・証明の細かな組み合わせは年度で扱いが変わることもあるので、そこは各校の最新資料で照らし合わせてください。

差が出るのは、費用と定員と訓練の場所のほうです。

学校 費用の目安 定員(何の人数か) 訓練の場所
東海大学 航空操縦学専攻 納付金+米国留学訓練費 専攻の募集枠(年度の要項で確認) 米国(ノースダコタ大)
崇城大学 航空操縦学専攻 約1,600万円+燃料代 学科の定員(専攻の人数は要確認) 国内(熊本・空港隣接)
桜美林大学 フライトオペレーションコース 約3,150万円(納付金+訓練費) コース定員 40名 米国など+国内
日本航空大学校(専門学校) 4年制 初年度121万+米国訓練 約4.6万ドル 操縦科 20名 国内(能登)+米国
法政大学 航空操縦学専修 ——(募集停止・廃止決定) —— ——

※費用は年度・為替・燃料などで変わります。ここでは各校が示す「標準額・参考額」として見てください。定員も、操縦課程そのものの人数なのか、学科全体の人数なのかで意味が変わります。実際の総額と募集人数は、最新の募集要項で確かめるのが確実です。

表だけでは見えないのは、その金額にどこまでが含まれているのか、そして訓練地が4年間の暮らし方をどう変えるのか、という部分です。

西風

西風
資格が同じなら、あとは何で選べばいいんですか?
スカイ先生

スカイ先生
資格の大枠が近いぶん、差は費用と訓練地に出るね。金額そのものより、どこまで含まれた数字なのかで見え方がずいぶん変わるよ。

訓練地で選ぶ|国内一貫・米国留学・専門学校

学校ごとの差がいちばん出るのは、「どこで訓練するか」です。国内中心の課程、米国留学を組み込む課程、専門学校という形に分かれます。

① 国内一貫型(崇城大学)
崇城大学は、阿蘇くまもと空港のとなりにキャンパスがあり、座学から実機の訓練まで国内で一貫して行うのが特徴です。教官と日常的に顔を合わせながら学びたい人や、訓練の拠点を国内に置きたい人にとっては、検討しやすい選択肢です。費用は4年間で約1,600万円(これに飛行実習の燃料代が別途)。

② 米国留学型(東海大学)
東海大学は、2006年に国内の大学で初めてパイロット養成コースを開いた学校です。米国のノースダコタ大学への留学・実機訓練を組み込んでいます。納付金は初年度が約110万円、2年目以降が年約90万円ほど。ただし、これに米国での訓練費・渡航費・滞在費が加わります。留学先では、訓練だけでなく生活の手続きや日常のやり取りも英語で進みます。訓練の中身だけでなく、英語で暮らすこと自体も比較の材料になります。

③ 専門学校型(日本航空大学校)
日本航空大学校は、石川県の能登空港キャンパスに操縦科を置く専門学校です。定員は20名。4年制は初年度121万円+米国訓練費約4.6万ドルが目安で、自家用操縦士から事業用、計器、無線の資格までを幅広く目指します(2年制は、すでに自家用の免許を持っている人向けです)。

なお、桜美林大学は、大学の航空・マネジメント学群にパイロット養成コース(定員40名)を置いています。特徴は、大学の納付金(4年で約1,151万円)とは別に、FAA・JCABライセンスの訓練費(参考で約2,000万円)を明示的に示していること。合計の目安は約3,150万円と大きいですが、納付金と訓練費が分けて示されているぶん、どの費目がどこに乗っているかは追えます。併願ができない点は、出願の組み立てそのものに関わってきます。

私大・専門学校の操縦課程5校を2軸で配置したマトリクス図。横軸が訓練地(国内⇔米国留学)、縦軸が学びの形(大学⇔専門学校)。法政大は募集停止として別掲

▲ 訓練地と学びの形の2軸で見ると、同じ操縦課程でも選び分けの軸が見えてくる。

西風

西風
同じパイロットを目指すのに、道のりがこんなに違うんですね。
スカイ先生

スカイ先生
学校名だけだと近く見えるけど、4年間の暮らし方はけっこう別物だね。国内で学びたいか、留学まで含めて考えるかで、残る候補も変わってくるよ。

法政大は募集停止・廃止決定済み

進路を調べていると、法政大学の名前を見かけることがあるかもしれません。古い比較記事や口コミで候補として紹介されていることもあるので、いまの状況を確かめておきます。

法政大学の航空操縦学専修(理工学部機械工学科)は、2026年時点で新入生の募集を停止しており、廃止が決まっています。2026年3月27日の大学の発表によると、

  • 2025年度以降、新入生の募集はすでに停止している
  • 2027年度以降も募集は行わない
  • いま在籍している学生の訓練終了をもって、専修を廃止する
  • 在学生については、卒業と必要な訓練の修了に向けて支援を続ける

とされています。背景には、実習を委託していたフライトスクールの受け入れ規模の縮小、整備士の不足、実習期間の長期化などがあると説明されています。

法政大学 航空操縦学専修が募集停止・廃止決定済みであることを示す注意ボックス。2025年度以降の募集停止・2027年度以降も募集せず・在学生の訓練終了で廃止

▲ 法政大は新規の進学先ではない。古い記事や口コミの情報に注意。

これから進学先を選ぶ場合、法政大学は出願候補ではなく、制度変更の経緯を知るための参考情報として扱うことになります。比較表に載せるときも、現行の選択肢とは区別しておくと混乱を避けられます。

西風

西風
検索で名前が出てくると、募集の状況まで変わっているとは思いませんでした。
スカイ先生

スカイ先生
こういう制度の変更があるからね。古い比較記事を見つけたときは、大学の公式発表と募集要項も並べて見ておくと、切り分けられるよ。

進学判断で外せない点

比較表の数字だけでは見えにくい、確認しておきたい点を補っておきます。

① 「資格が取れる」と「エアラインに就職できる」は別
これらの課程は、操縦士の資格取得を支援・教育する場であって、エアラインへの就職を自動的に保証するものではありません。採用では、資格や飛行時間、航空英語、身体検査、適性検査、面接、そしてその年の採用の状況まで見られます。

そのうえで、私が学校を見るときにいちばん重く見るのは「合格実績」です。卒業生が入社後にどう活躍しているかは、その学校から採り続けるかどうかにもつながっていく、と私は見ています。だから私は、少なくとも5年、連続して採用が落ちていないかを目安にしています。航空大学校には「過去5年以内に卒業生を採用した航空会社へのアンケートで8割以上の肯定的評価を得る」という国の目標が置かれています。就職したあとの評価まで含めて見られる場面がある、という参考にはなります。

ただ、その5年ぶんの数字は、探しても表に出ていないことが多いです。各校とも「主な就職先」は社名で出しますが、年度ごとに操縦職で何人採られたかまでは、あまり公表されていません。日本航空大学校が「22年連続就職率100%」に「操縦科は最終ライセンス取得時期と公募が不定期のため除外」と注記しているのは、その事情を正直に開示している例です。なので、この5年ぶんは、説明会や個別相談で直接聞くことになります。

② 総額は「学費+訓練+生活費」で見る
特に留学型では、「訓練費」に何が含まれているかで、必要な総額の見え方が大きく変わります。授業料のほか、飛行訓練費、燃料費、追加訓練費、身体検査や試験の費用、渡航・滞在・生活費、そして予備の資金。ここまで足して、はじめて「総額」です。

金額に驚くかもしれませんが、支える制度も実際にあります。私の周りでも、奨学金や特待生を使っている人は多かったです(東海大は実機訓練課程の履修者全員に計150万円を給付、崇城大は入試成績上位の最大5名に500万円、桜美林大は最大10名に計300万円を減免。どの学校からでも狙える枠として、航空機操縦士育英会の無利子貸与500万円もあります=1学年で計25名ほど)。就職後の収入で返していく前提で組む人が多いのも確かです。ただ①のとおり就職までは保証されませんし、入社の時期や訓練の進み方がずれれば、返済の開始もそのまま後ろへずれます。借りる額を決めるときは、そのずれごと家族で話しておくといいと思います。

③ 伸びるのは、お金だけじゃない
訓練は、飛ぶ時間が同じでも待つ時間が増えます。天候、機材の整備、教官やチェックの枠——このあたりの事情で、訓練期間が当初の想定より延びることはあります。延びた月の生活費や、留学型なら渡航費・滞在費。ここに余裕がないと、訓練そのものより先に資金計画のほうが行き詰まります。

もうひとつ、時間そのものにも期限があります。私の後輩に、日本の学科試験に受かったあと、期限内に免許まで届きそうになくて、いったん帰国してから渡り直した人がいました。学科試験に合格すると、その通知の日から2年以内に実地試験を受ける、という決まりがあるからです(航空法施行規則第48条)。2023年11月に学科試験がCBTに変わりましたが、この2年は動いていません。私のころと同じです。

学校説明会で聞いておきたい6つの質問を並べたチェックリスト図。取れる資格・想定総額・追加費用・操縦職の就職実績・身体検査で不適合時の扱い・留学先や機材変更の影響

▲ 数字だけでなく「何が含まれるか」まで聞けると、学校を比べ直しやすい。

学校説明会や個別相談では、図の6つをそのまま聞いてみるのがいいと思います。学校案内を読むだけでは横に並べにくいところばかりで、同じことを聞いても、返ってくる答えの前提は学校ごとに違います。年度はいつのものか、費用ならどこまで含んだ数字か、実績なら母数は何人か。そこまで一緒に聞いておくと、持ち帰ってから他校と並べられます。

とくに費用と就職実績は、年度やコース、訓練の進み方で見え方が変わります。口頭の説明だけで終えず、資料の名前と確認した日を書き添えておくと、家族と話すときにも使えます。

西風

西風
こんな細かいことまで、聞いていいんですね。
スカイ先生

スカイ先生
聞いてみると、パンフレットには書いていない前提が出てくることがあるよ。とくに費用と訓練期間は、学校によって答え方がずいぶん違うんだ。

まとめ

進学先を比べるときの軸を、もう一度まとめます。

  • 私大・専門学校の操縦課程は「事業用+計器」を目指す点は共通だが、費用・訓練地・定員・入試は学校ごとに大きく違う。
  • 訓練地で見ると、国内一貫型(崇城大)/米国留学型(東海大)/専門学校型(日本航空大学校)に分かれる。桜美林大は訓練費を別建てで明示(合計目安 約3,150万円)。
  • 法政大学の航空操縦学専修は、2026年時点で募集停止・廃止決定済み。新規の進学先ではない。
  • 費用は「学費+訓練+生活費」で見る。パンフの金額に何が含まれるかを必ず確認する。
  • 「資格が取れる」と「就職できる」は別。就職実績は操縦職と業界全体を分けて読む。

eVTOL時代ではどう変わるか

少しだけ先の話も。空飛ぶクルマ(eVTOL)が広がっても、当面は既存の航空機に近い制度・訓練が土台になると見られています。どの学校で学んでも、そこで積む操縦の基本は、その土台の上に乗ります。進路を選ぶ段階では、将来の流行より、どんな環境で基本を積めるかのほうが具体的に見比べられます。

30秒クイズ・考える問い

最後に一問。

Q. 法政大学の航空操縦学専修は、これから進学先の候補にできるでしょうか?

答えを見る

候補にはできません。2026年3月27日の大学の発表で、2025年度以降の新入生募集はすでに停止、2027年度以降も募集せず、在学生の訓練終了をもって専修を廃止すると決まっています。古い比較記事や口コミには候補として残っていることがあるので、出願先を調べるときは、検索結果だけでなく各校の公式発表と募集要項まで見にいくと、古い情報と切り分けられます。

考える問い:あなたが学校を選ぶなら、「国内一貫」「米国留学」「専門学校」のうち、どのタイプが自分に合いそうですか?

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