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SkyDriveの空飛ぶクルマは今どこまで進んでいる?デモは済み、商用は2028年目標
この記事で分かること
| 対象 | SkyDrive・空飛ぶクルマに期待している人/eVTOL関心層 |
| 難易度 | ★★☆(業界動向・制度) |
| 所要時間 | 約7分 |
| 読むと分かること | ①SkyDriveの”現在地”(デモ・型式証明・商用のどの段階か) ②デモ飛行と実用化の違い ③型式証明という関門と、組んでいる体制 |
はじめに
「SkyDriveの空飛ぶクルマ、万博で飛んだんでしょ? もう乗れるの?」——そんなふうに聞かれたこと、ありませんか。ニュースで華やかな映像を見ると、実用化はもう目前のように感じますよね。
ただ、”飛んだ”と”人を乗せて商売できる”の間には、いくつもの段階があります。ニュースを追っていると、「飛んだ」「申請された」「2028年を目指す」が同じ温度で並んで見えることがあります。そこを分けて見ると、現在地がつかみやすくなります。
このあと、SkyDriveが「いまどの段階にいるか」を、デモ・認証・商用に分けて並べます。次の発表を見たときに、「これは今どこの話だろう」と考えやすくなるはずです。
なお、私はパイロットではありますが、eVTOL事業の当事者ではありません。ただ、既存の飛行機でも、安全性が見えにくい確認を積み重ねて形になっていくことは、身に染みています。その感覚もまじえながら、公開資料(SkyDriveの公式発表と国土交通省の資料)をもとに現在地を追ってみます。
結論(先に一言)
結論から言います。2026年10月の時点で、SkyDriveは「もう就航した」わけではありません。
2025年に無人(リモート操縦)のデモ飛行を見せ、機体の型式証明は国土交通省で審査の途中、そして2028年の商用サービス開始を”目標”にしている——これが現在地です。乗客を乗せた商用運航は、まだ始まっていません。
SkyDriveは今どの段階にいる?


デモ・型式証明・商用運航を分けると、SkyDriveの現在地は次のようになります。

▲ SkyDriveはいま型式証明の審査中。2028年は商用サービス開始の目標で、確定した就航日ではない。
機体そのもの、「SKYDRIVE(SD-05型)」は、操縦士1名+乗客2名の3人乗りで、最大離陸重量はおよそ1,400kg、航続距離はおよそ15〜40km(公式仕様)。コンパクトで静かな乗り物として設計されています。
「審査中」は、書類を出して結果を待っているだけの状態ではありません。航空局の通達では、型式証明の審査は申請した時点で始まります。2026年3月にSkyDriveが公表した時点では、その中身は、どんな試験で安全を示すかを国とすり合わせる段階でした(同社が示す6つのステップのうち3〜4段目)。国が自ら機体を確かめる型式証明飛行試験は、原則として「飛行試験開始確認書(TIA)」が出てから。飛行試験を含む確認は、この先に控えています。
パイロットとして「これなら乗れるな」と感じるのは、私の場合、型式証明が出て、FSBR(機種ごとに、パイロットの資格や訓練の基準をまとめた報告書)や運航会社が決まったときです。ただ、この感覚は民間のエアラインのパイロットと自衛隊出身の飛行試験パイロットでも大きく違うので、一概には言えません。
現時点では、一般の乗客がSkyDriveに乗れる段階ではありません。でも段階そのものは、着実に前へ進んでいます。
「デモ飛行」=実用化ではない
2025年、SkyDriveは大阪・関西万博と、大阪港バーティポートでSD-05のデモ飛行を見せました(万博会場は7月31日〜8月24日、大阪港は9月14〜23日)。大きなニュースになったので、記憶にある方も多いと思います。正直に言うと、機体が浮く映像を見ると「ここまで来たなら、次は人を乗せる番では」と感じます。だからこそ、”飛んだ”のあとに何があるのかを見ておきたくなります。
映像だけを見ると見落としやすいのですが、これらのデモは、操縦士を乗せず、自動制御とリモート操縦による”無人”の飛行でした(2026年に東京や山口で行ったデモも同じです)。つまり「3人乗りが乗客を乗せて飛んだ」のではなく、”人前で飛べた”段階なんです。

飛んだ回数も見てみます。万博会場では、運航日19日に朝9時30分ごろの1回、天候や機体の状態しだいで11時30分ごろにもう1回という予定でしたが、実際に飛んだのは期間を通して17回でした(万博協会の報告書)。天候を理由に運休した日もあります。デモとして飛べたことは大きな前進です。ただ、風や天候を含めて、日々の運航をどこまで安定して続けられるかは、これから見えてくる部分も多そうです。
人前で飛ぶのは、間違いなく大きな前進です。ただ、それをそのまま「実用化」と受け取ると、次に来る「型式証明」「運航体制」「離着陸場」という段階が見えなくなってしまう。前進は前進として受け取りながら、商用化までの道のりは別に見ておきたいところです。
型式証明という関門
次の段階が、型式証明です。
型式証明とは、その機体の設計が安全の基準を満たしているかを、国(航空局)が確かめて出す”お墨付き”のこと。人を乗せた商用運航に欠かせない条件のひとつです。
SD-05は、日本で最初に型式証明の”申請が受理された”eVTOLです。ただし、2026年10月の時点で、型式証明の”取得”には至っていません(審査中)。日本では複数の機体(SkyDrive・Jobyなど)の申請が受理されていますが、いずれもまだ取得・就航はしていません。手続きを大きく3つに分けると、次のようになります。

▲ 申請受理は取得を意味しない。型式証明を取得しても、商用運航にはほかの条件も必要。
受理から取得までの審査には、長い確認が続きます。その重さを、旅客機の例で少しだけ。型式証明は、世界中から集まった大勢の専門家が、ときに10年がかりで取り組む、とても難易度の高い仕事です。ボーイング787では、アメリカの当局(FAA)のチームにほかの国の航空当局などの専門家も加わり、申請から取得まで8年あまり、飛行試験は900時間を超えました。最近は新しい技術が入るぶん、当局も時間をかけて議論し、決めなければならない場面が増えていると感じます。737 MAXは2度の墜落事故のあと審査の仕組みが見直され、派生型のMAX 7に承認が出たのは、10年近い審査を経た2026年8月でした。


もうひとつ、無人デモと有人の商用運航のあいだにある壁についても。無人のデモは、型式証明がなくても、国の個別の許可をそろえれば実施できます。乗客を乗せる商用運航と並べると、必要なものはこれだけ違います。
| 無人のデモ飛行 | 乗客を乗せる商用運航 | |
|---|---|---|
| 型式証明 | なくても実施できる | 必要 |
| 機体 | 試験飛行の許可(航空法第11条ただし書) | 機体ごとの耐空証明 |
| 離着陸の場所 | 空港以外での離着陸の許可(第79条ただし書) | 離着陸場の準備 |
| 操縦 | 操縦者を乗せない”無操縦者航空機”の許可(第87条) | 資格を持つ操縦士 |
| 運航する会社 | — | 航空運送事業の許可・運航規程の認可 |
商用運航は無人デモの延長線上にあるとはいえ、ハードルは地区予選の初戦と全国大会の決勝戦くらい違う、というのが私の実感です。
だからこそ、”途中”であることは後ろ向きな話ではなく、安全のための当然の過程だと受け取っておくと、落ち着いて見ていられます。
誰と組んでいる?体制はできつつある
機体と制度のあいだで、体制づくりも進んでいます。
- 鉄道会社4社(近鉄グループホールディングス・Osaka Metro・JR東日本・JR九州)とSkyDriveが資本業務提携。
- 離着陸場では、大阪港バーティポート(Osaka Metroが整備・運営)を拠点に、2028年度以降の商用運航開始を目指す体制づくり。
- 東京都の「空飛ぶクルマ実装プロジェクト」では、野村不動産を代表とするコンソーシアムに参加(使用予定機体がSD-05)。
地域としては、国内で大阪(森之宮・大阪港)、大分(別府湾)、三重(志摩)、岩手(小岩井農場)、東京などで具体化が進んでいます。SkyDriveの本社は愛知にありますが、現時点で愛知をサービス地域として示した公式資料は確認できません。「愛知でサービス」と見かけたら、そこは分けて受け取っておくとよさそうです。
こうして並べると、機体・体制・地域の準備は、着実に進んでいることが分かります。一方で、型式証明の審査はまだ途中です。商用化の時期を見るうえでは、この進み方が大きなポイントになります。
まとめ
- 2026年10月時点、SkyDriveは「就航済み」ではない。デモは済み、型式証明は審査中、商用は2028年”目標”。
- 2025年のデモ飛行は無人(リモート操縦)。”人前で飛べた”段階で、”乗客を運べた”段階ではない。
- 型式証明は「申請受理(スタート)」と「取得(ゴール)」が別。SD-05は国内初の申請受理だが、まだ取得していない。
- 鉄道4社・大阪港バーティポート・東京都など、体制と地域の準備は進行中。
- 残る鍵は、安全の検証(型式証明)がそろうかどうか。
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eVTOL時代ではどう変わるか
日本の空飛ぶクルマは、SkyDriveだけでなく、複数の会社が同時に進んでいます。制度の側も、官民協議会のロードマップ(2026年3月改訂)が、2028年の商用化、2030年以降の拡大を目標に掲げています。
ただし、これらはいずれも”目標”であって、確定した就航日ではありません。だから新しいニュースを読むときは、「デモ/商用」「申請/取得」「目標/確定」を切り分ける——この習慣があると、過度な期待にも、過度な悲観にも傾かずに、現在地をそのまま見られます。
空飛ぶクルマは、着実に段階を上っている途中。そう捉えておくと、次のニュースも落ち着いて追えます。※本記事の現在地は2026年10月時点です。
30秒クイズ・考える問い
Q1 SkyDriveのSD-05は、2026年10月の時点で、型式証明を取得しているでしょうか?
答えを見る
まだ取得していません。審査中です(申請は、日本で最初に受理されています)。Q2(考える問い) 2025年の大阪港でのデモ飛行には、操縦士と乗客が乗っていたでしょうか?
答えを見る
いいえ。自動制御とリモート操縦による”無人”の飛行でした。Q3(考える問い) 「型式証明の申請が受理された」と「型式証明を取得した」は、同じ意味でしょうか?(この記事の”関門”を思い出してみてください)
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– 日本の制度全体の流れを知りたい方は「日本の空飛ぶクルマ制度ロードマップ」(#202)へ。SkyDriveの現在地が、どの工程の上にあるかが分かります。
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