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今回のポイント:「毎日やる」と決めるなら、できなかった日にどうするかも先に決めておく。山口真由さんが「抜け道」と呼ぶ、この例外の作り方を、本と研究から考えます。
皆さん、こんにちは。毎日やると決めたことを1日休んで、次の日もなんとなく手がつかず、気づけば「もういいか」。そんな流れに、覚えのある方もいると思います。
その「もういいか」の手前で止まる決め方を、まずは私の英語のルールで見てみます。
朝がだめなら夜にやる
私は、毎朝30分、英語の勉強をすると決めています。守れなくても、夜に30分、確実に取るようにしています。
守れない朝があっても寝るまでにやりきる、というのは、守れない日が出てから足したのではなく、始めたときから決めていたことです。
朝にできなかった時点では、夜の30分が残っているので、まだルールは破れていません。
それって、自分に甘いだけでは?
そう見えるかもしれませんが、この形をはっきり勧めている本があります。努力を続ける方法を、37個集めた一冊です。
山口さんの答えは「抜け道」
その本が、山口真由さんの『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』です。山口さんのことはテレビで見て、努力家だという印象を持っていました。その山口さんでも、寝る前に5分かかる日記は続かなかったそうです(いまは代わりに、毎晩1分だけ空を見上げているとか)。
司法試験の勉強に打ち込んでいたころ、山口さんが自分に課したのが、このルールです。
「みずから遊びを提案してはいけない。また、人の誘いは2度までは乗ってはならない」
裏を返せば、3度目の誘いには乗っていいわけです。
この決め方には理由も付いています。3度も誘ってくれる友達には、「人間関係を大事にする」ために応えるのだそうです。そう書いたすぐあとで、山口さんは「正直にいえば、私も一緒に遊びたいだけです。」と打ち明けています。
歯のホワイトニングをしていたときのルールにも、使える条件が付いていました。コーヒーは、仕事の会議で出された1杯まで(ミルクで色を薄くしたうえで、という条件つきです)。会議でコーヒーが出てくると「ラッキー」と思う、とまで書いてあります。
山口さんによれば、厳しいルールの中で使う抜け道は、とても幸せに感じられ、その幸せが努力を最後までやりきることにもつながります。逆に、抜け道のない厳しいルールは守れなくなりやすく、一度破れば、それまでの努力は「水の泡」になってしまうそうです。
厳格なルールを決めたうえで、最初からそこに「抜け道」を忍ばせておくのがポイントです。「抜け道」をひとつ作ることは、他の抜け道を許さなくするという効果もあります。
(山口真由『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』第四章 方法34「ルールに「抜け道」を作る」)
ここで紹介した2つの抜け道には、どちらも使える条件が付いていました。3度目の誘いと、会議の1杯。線がはっきりしているぶん、それ以外の日に例外を足すかどうかで、迷わずに済むのかもしれません。
本の基本情報
書名:『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』
著者:山口真由
出版社・発行:扶桑社・2014年1月(のちに新書・文庫になり、文庫は2024年11月)
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一度破ると、本当になし崩し?
抜け道を決めていても、それさえ使えない日はありそうです。破ってしまったあとのことを、山口さんは第三章でこう書いています。
そして、守り続けることによって、そのルールは自分のなかで、どんどん固い決まりになります。結果的に破ることができなくなります。逆にいえば、一度破ってしまったルールは、なし崩しで守れなくなるのです。
(山口真由『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』第三章 方法23「決めたルールを守るには」)
この一文を読んで、私が最初に思ったのは、一度守れなかったことで、自分との約束は守らなくてもいいと勘違いしてしまうのではないか、ということでした。
破った代償は、その場では気づかないので、つい甘く見てしまう。けれど、自分との約束を守れなかった事実は、自信の喪失になって、気づかないうちに自分に返ってくる。
ただ、これは引用を読んだ私の受け止め方で、1回休んだことが習慣そのものに与える影響とは、分けて考えられます。1回休んだら、それまでの積み重ねは本当に無駄になるのでしょうか。
これに近いことを調べた研究があります(Lally ほか、2009年)。96人に、食事・飲み物・運動から1つを選んでもらい、「朝食のあと」のような同じ場面で、12週間、毎日続けてもらいました。
意外にも、1回やらなかった日があっても、習慣ができていく流れには、ほとんど影響がありませんでした。この研究が見ていたのは、行動がどれだけ自然に出るようになったかで、休んだあとに「もういいか」と感じたかどうかまでは調べていません。
そもそも、この研究の見込みでは、習慣になるまで早い人で18日、遅い人は254日かかります。8か月あまり、1日も休まないほうが難しそうですよね。
習慣そのものは、1回休んだくらいでは崩れにくい。ここから先は研究の外ですが、崩れるのは、休んだ1日より、そのあとの受け止め方のほうではないかと思います。山口さんが書いているのも、習慣ではなく、自分に課したルールのことでした。
だとすれば、ルールのほうを、1日休んでも破れない形にしておく手があります。
休める日を決めると、戻れる?
それでも、例外を先に決めておくと、かえってそれに甘えてしまいそうな気もしますよね。
この心配に近いことを、歩数で試したのが Sharif と Shu の実験(2021年)です。アメリカの大学の学生と職員273人が、ふだんの1.2倍の歩数を目標にして、目標の立て方が違う4つの組に分かれました。
比べたのは、目標に届かなかった翌日に、もう一度目標を達成できた割合です。結果は次のとおりでした。
- 「毎日」の組は、4割弱
- 「週5日」の組は、4割強
- 「毎日。ただし週2回までは休んでいい」の組は、5割強
- 「毎日。ただし4週で8回までは休んでいい」の組は、5割弱
ちょっと意外なのは、最低限やる日数が同じ「週5日」の組より、「週2回まで休める」組のほうが、次の日に戻れていたことです。7日のうち2日まで休めるので、最低はどちらも5日なんです。
研究チームは、休みの枠を実際に使うことが大事だと見ていますが、使ったこと自体が次の日の達成につながったのかまでは、この結果だけでは言い切れません。
自分のルールを書き出す
英語だけでなく、お酒のルールにも抜け道を作っています。基本的には飲まないと決めていますが、飲み会のときだけは飲みます。その次の日の朝は30分だけ遅れて起きていい、というところまでがルールです。
パイロットの仕事にも、うまくいかなかったときの動きを先に決めておく場面があります。着陸の直前に、決めておいた条件がそろわなければ着陸をやめてやり直す、ゴーアラウンドです。その日のうちに勉強を振り替えるのとは違い、こちらは条件がそろわないときのやり直しです。
あれを失敗と感じるかと聞かれたら、私は「ゴーアラウンドありきで進入する」と答えます。判断の基準は、このブログの「ゴーアラウンドは失敗ではない|安定進入で決まる着陸やり直しの判断基準」にまとめました。
英語とお酒のルールを並べると、こんな形です。
| 英語 | お酒 | |
|---|---|---|
| ふだんの決まり | 毎朝30分 | 基本的に飲まない |
| 例外を使える条件 | 朝にできなかった日 | 飲み会のとき |
| 例外の中身 | 夜に30分(寝るまでにやりきる) | 飲む。次の朝は30分遅く起きていい |
私の「朝がだめなら夜」が、実験の休みの枠と同じ働きをするのかは分かりません。それでも、英語とお酒のルールは、どちらも例外を使える条件と、使ったときにすることが、始める前に決まっています。
自分で表を作るときは、この3行の下に、決めたとおりにできなかったあとの戻り方として、「次はいつ取り組むか」の1行だけ足してみてください。
この記事で取り上げた「抜け道」は、本にある37個の方法の一つです。本には、努力をまわりに見せる、ライバルを使う、といった続け方も並んでいます。
冒頭の「もういいか」が顔を出したのは、休んだ次の日でした。次はいつ取り組むか。
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