バーティポートとは?ヘリポート・空港との違いをやさしく解説

バーティポートとは?ヘリポート・空港との違いをやさしく解説

この記事で分かること

対象 eVTOL・空飛ぶクルマに興味を持ち始めた志望者〜訓練生
難易度 ★☆☆(予備知識なしでOK)
所要時間 約7分
読むと分かること バーティポートの意味/ヘリポート・空港との違い/着陸帯や充電などの構成/立地に必要な3条件/日本の整備状況

はじめに

「バーティポート」という言葉を、空飛ぶクルマのニュースで見かけたことがあるかもしれません。「ヘリポートの新しい呼び方かな」と、なんとなく受け取った方もいると思います。

ただ、中身をたどると、ヘリポートの考え方に、電動の機体ならではの事情が加わっています。どこにでも置けそうに見えて、置くための条件は思いのほか多い。この「似ているのに、同じではない」感じが、バーティポートをつかみにくくしています。

空飛ぶクルマの話は、つい機体に目が向きがちです。このあとは、離着陸場を使うパイロットの目線で、「どこに、どう降りるか」の側から追いかけます。「駅前のビルの屋上にバーティポートを計画」といったニュースを見かけたとき、その場所で何がそろえば使えるのかを確かめる手がかりになります。

結論(先に一言)

バーティポートとは、eVTOL(電動で垂直に離着陸する空飛ぶクルマ)が発着するための専用の離着陸場です。ヘリポートの考え方を土台にしながら、電動・静か・垂直という特性に合わせて、着陸帯・充電設備・待機や乗り降りの動線までをひとまとめにした施設を指します。ただし「狭い場所にも置ける」と言われる一方で、安全のための区域・騒音・まわりの空との調整という条件を満たして初めて、実際に使える施設になります。

バーティポートとは?ヘリポート・空港と何が違う

「空港・ヘリポート・バーティポート、どれも飛行機やヘリが降りる場所でしょ?」——空から降りてくる乗り物のための場所、という点では、どれも同じです。

ただ、設計のうえでは、この3つは「何が発着するか」で役割が分かれます。空港は、主に滑走路を走って離着陸する飛行機のための場所。ヘリポートは、垂直に発着するヘリコプターのための場所。そしてバーティポートは、eVTOL——複数のプロペラで電動・垂直に飛ぶ機体——のための場所です。

国際的な基準づくりでは、バーティポートはヘリポートの考え方(進入する経路、着陸する区域、まわりの安全な余白)を下敷きに、eVTOL向けに組み立て直されています。日本の国土交通省の指針でも、バーティポートは「VTOL機専用の陸上ヘリポート」と位置づけられています。

空港・ヘリポート・バーティポートを発着方式・主な機体・滑走路の要否・立地イメージの4項目で比べた黒板の比較表。バーティポートは滑走路のいらないeVTOL版のヘリポートだと分かる

▲ 滑走路がいらないのは、ヘリポートもバーティポートも同じ

西風
西風
じゃあ、ほとんどヘリポートと同じってことですか?
スカイ先生
スカイ先生
降りるところまでは、かなり似ています。違いが出てくるのは降りたあとで、電気で飛ぶぶん、充電を待つ時間や、お客さんの乗り降りの流れまで、施設の設計に入ってきます。

バーティポートには何がある?構成をのぞいてみる

バーティポートの中身は、機体が降りるための区域と、降りたあとに使う地上の設備に分かれます。

降りる側の中心にあるのは、着陸帯と接地区域です。着陸帯は、最終進入から着地(またはホバリング)へ移るための区域で、専門的には FATO と呼ばれます。その内側にあるのが、タイヤやスキッドが実際に接地する区域で、こちらは TLOF。機体の重さを受け止める、頑丈な面です。さらにそのまわりを、万一のはみ出しに備えた安全区域(余白)が囲んでいます。

地上側には、eVTOLならではの設備が並びます。充電設備、次の便までの待機スペース、そしてお客さんが安全に乗り降りするための動線です。電動機なので、飛んでいる時間だけでなく、地上で充電にかかる時間も、1日に何便飛ばせるかに関わってきます。

バーティポートの構成を「降りる場所」(FATO・TLOF・安全区域)と「地上の場所」(充電・待機・旅客動線)に分けて示した黒板の構造図

▲ 空から降りる区域と、地上で過ごす場所。両方あわせて、ひとつのバーティポート

暁
暁
降りる場所って、平らな面がひとつあるだけかと思ってました。近づく区域と、足をつく区域は別なんですね。
スカイ先生
スカイ先生
別にしておくと、安全の余白をどこまで取るかが決めやすくなります。ここは、ヘリポートから受け継いだ知恵ですね。

どこに・どうやって作る?立地と3つの条件

バーティポートの場所選びは、「土地さえあればどこでも」とはいきません。広さのほかに、空への出入り、まわりに届く騒音やダウンウォッシュ(吹き下ろしの風)、近くを飛ぶ航空機との関係が重なってきます。

最初に気になるのは、空への出入りです。垂直に発着できるといっても、いつも真上から出入りするわけではありません。進入や離陸の方向に、高い建物や障害物のない空の通り道は欠かせません。

経路には、風の問題もついてきます。国土交通省の指針も、屋上付近では気流が乱れることを見越して、着陸帯の下に風を通す構造をすすめています。私自身、離着陸の経路に大きな地形の変化がある場所では、風向きが読みにくくなったり、思ったより上昇気流を感じたりして、着陸の前に気持ちが引き締まることがありました。eVTOLがビルの谷間のような狭い場所に降りるようになれば、今度はビル風の影響も考えることになると思います。

騒音とダウンウォッシュへの配慮も、場所選びを左右します。これは、いまの空港にもある話です。空港ごとに「ローカルルール」と呼ばれる決まりがあり、騒音を減らす離着陸のやり方や、車輪(ランディングギア)を下ろすタイミングまで決めているところもあります。たとえば成田空港では、南から着陸する飛行機に、陸に入る前の海の上で車輪を下ろすよう求めています。機体から漏れて凍った氷が、車輪を出すときに落ちやすいからです。

海の上につくられた空港とちがって、住宅地に近い空港では、周りに住む人に理解してもらうための飛び方が、ふだんの運航に組み込まれています。eVTOLはヘリより静かとされます。それでも街なかの狭い場所では、機体が起こす風や音がどこへ届くのかまで含めて、離着陸の仕方を考える場面が増えそうです。

そして、まわりの空との調整です。空港やヘリの経路が近くにあれば、管制や飛行ルートとの重なりを前もってすり合わせておくことになります。空港のまわりの空がどんな決まりで動いているかは、「管制圏とは?」(#9)で整理しています。

バーティポート立地の3条件を示す黒板の図。①進入・離陸経路の抜け②騒音とダウンウォッシュ③まわりの空との調整、の3つがそろって使える場所になる

▲ 3つの条件がそろって、使える場所になる

西風
西風
垂直に降りられるなら、経路ってそんなに気にしなくてもいいのかと思ってました。
スカイ先生
スカイ先生
最初は、そう見えますよね。でも、「降りられる」と「安全に何度も降りられる」は、別の話なんです。

日本ではどこまで進んでいる?

日本でも準備は動き出していますが、ルールはまだ仮置きの段階です。国土交通省の航空局が2023年12月に公表した「バーティポート整備指針」は、正式な基準ができるまでの暫定的な手引きで、着陸帯や安全区域の大きさ、高架に作るときの構造の考え方などがまとめられています。

この指針は、欧米のバーティポート向けの手引きを参考にまとめられたもので、国の説明では、とくに欧州(EASA)の基準に沿うことを基本にしています。その欧米の手引きも、国際民間航空機関(ICAO)のヘリポートマニュアルなど、これまでのヘリポートの基準が土台です。アメリカの航空当局(FAA)自身、eVTOLがどう飛ぶかを示すデータは今のところ限られていると書いていて、ルールもまだヘリコプターの運用にかなり近い想定で組み立てられています。

一方で、日本のヘリコプターのルールには、欧米と違うところもあります。たとえば、進入経路の下で建物などの高さを制限する範囲の長さは、日本のいまのヘリポートの基準では1,000m、指針では欧州の手引きと同じ1,220mです。欧米にならった指針が、日本の都市や地形、いまのヘリポートの運用にどこまでなじむのか。ここは、これから使いながら確かめていくところだと、私は見ています。

制度づくりと並んで大きな注目を集めたのが、2025年の大阪・関西万博です。当初は「会場で商用の運航を始める」という目標が掲げられていましたが、お客さんを乗せた商用サービスは見送られ、会場のバーティポートでは複数の機種がデモ飛行や展示を行う形になりました。

日本のバーティポート整備の流れを示す黒板のロードマップ。2023年12月の整備指針→2025年万博のデモ飛行(商用は見送り)→これから商用化へ、と進む

▲ 指針はまだ暫定、万博はデモ飛行まで。商用運航はその先の段階

暁
暁
万博で商用は見送り、って聞くと、ちょっとがっかりしちゃいます。
スカイ先生
スカイ先生
残念でしたね。人前で飛ぶところまでは来たのに、お客さんを乗せるところまでは届かなかった。その差は、思っていたより大きかったのかもしれません。

(基準日:2026年9月時点)

まとめ

  • バーティポートは、eVTOL(空飛ぶクルマ)が垂直に発着するための専用の離着陸場。土台はヘリポートの考え方。
  • 中心にあるのは着陸帯(FATO)と接地区域(TLOF)、そのまわりの安全区域。地上には充電・待機・乗り降りの動線が並ぶ。
  • 使える場所にするには「進入経路の抜け・騒音とダウンウォッシュ・まわりの空との調整」の3条件が要る。
  • 日本は2023年に暫定の整備指針、2025年万博でデモ飛行。商用運航はこれから。

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eVTOL時代ではどう変わるか

バーティポートは、はじめからeVTOLが飛ぶことを前提にした施設です。空飛ぶクルマが街で使えるかどうかは、機体の性能だけでは決まらず、どこに降りて、まわりとどう折り合いをつけるかにも左右されます。

もし街のあちこちにバーティポートが増えていけば、駅やバス停のように「近くの発着場から乗る」感覚が生まれるかもしれません。そのとき、パイロットが気にかけることも、機体の操縦だけでなく、発着場ごとの経路や、まわりに届く音と風への配慮にまで広がっていくと思います。

30秒クイズ・考える問い

30秒クイズ

次のうち、バーティポートの説明として最も適切なものはどれでしょう?

  • A. 滑走路を使って飛行機が離着陸する場所
  • B. eVTOLが垂直に離着陸するための専用の離着陸場
  • C. ドローンだけが使う小さな発着点

答えは B。ヘリポートに似ていますが、eVTOLの充電や乗り降りまで含めて考える点に、バーティポートらしさがあります。

考える問い:ふだん通る駅前や商業施設の屋上を思い浮かべたとき、eVTOLが安全に出入りできそうな場所はあるでしょうか。逆に「ここは難しそう」と感じるのは、どんな場所ですか。

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降りる場所の話の次は、そこに降りてくる機体の話です。

スカイ先生(朝霧)プロフィール

本ブログは、10年間のパイロット経験を積み重ねてきた筆者が、「誰でも飛べる」をモットーに将来パイロットになりたい学生に向けて発信しています。

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