米国eVTOLメーカー4社のいま|Joby・Archer・Beta・Wiskを横断比較

この記事で分かること

対象 eVTOL(空飛ぶクルマ)に関心のあるパイロット志望者・訓練生
難易度 ★★☆(ニュースの読み方)
所要時間 約7分
読むと分かること 米国の主要4社(Joby・Archer・Beta・Wisk)の機体方式・型式証明の段階・就航目標・操縦方式の違い/「申請」「初飛行」「認証」がそれぞれ何を意味するか

はじめに

「Joby、Archer、Beta、Wisk……名前は聞くけど、結局どこがどこまで進んでるの?」——eVTOL(電動垂直離着陸機、いわゆる空飛ぶクルマ)のニュースを追っていると、社名は覚えても、各社の違いとなると少し曖昧なままだったりします。

しかも見出しには「初飛行」「認証」「2026年に就航」と並びます。見出しだけ読むと、つい「もうどこか飛んで(就航して)いるのかな」と思うこともあります。でも、同じ言葉でも各社で意味がけっこうちがうんです。

そこで4社を同じ物差し——機体の方式・型式証明の段階・就航の目標・操縦の方式——で並べてみます。「申請」と「認証取得」の違いも含めて、次にニュースを読むときの手がかりになればと思います。

操縦する側から見ると、新しい機体のニュースは「どの段階にいるか」で読み方が変わります。

米国eVTOL4社を4つの物差しで並べる全体マップ。機内に操縦士が乗る3社と、操縦士なしのWisk。4機種とも型式証明と一般の乗客を運ぶ運航はまだ(2026年10月時点)

▲ Joby・Archer・Betaは機内に操縦士が乗って始め、Wiskは操縦士なしで始める。4機種とも、いまは型式証明を取る前の段階にいる。

結論(先に一言)

米国の主要eVTOL4社は、機体の方式も型式証明の段階もばらばらですが、ひとつだけ共通点があります。

2026年10月時点で、FAA(米国連邦航空局)の型式証明を取得して一般のお客さんを乗せた商用運航を始めた会社は、まだ一つもない、ということです(各社IR・FAA)。

JobyとArcherは、それぞれの認証工程の後半にいると発表しています(Joby=5段階の第5・最終段階、Archer=4フェーズ中Phase3完了)。Betaは市場調査目的の特別な承認を受けた段階、Wiskは操縦士が乗らない自律飛行をめざしています。認証の段階だけでなく、操縦方式や運航検証の始め方にも、4社の違いがあります。

米国eVTOL4社を一枚で|方式・認証・就航のいま

4社の機体の方式・認証の段階・就航の目標・操縦方式を並べると、次のとおりです。

会社 機体・方式 型式証明の段階(FAA) 就航の目標 操縦方式
Joby S4/ティルトローター(6基を傾転) 5段階中の第5・最終段階(2026-08) 2026年内に初の乗客(会社目標) 有人(操縦士1+乗客4)
Archer Midnight/前6基傾転+後6基は垂直固定 4フェーズ中Phase3完了・Phase4中(2026) 2026年に米国で運航検証(eIPP)開始が目標 有人(乗客4)
Beta A250/リフト+クルーズ(揚力4+巡航1) 市場調査目的の特別な承認(2026-10)※商用運航ではない 完全な認証を2028年に見込む(会社広報・報道) 有人
Wisk Gen6/前6傾転+後6揚力+固定翼 型式証明の申請対象・認証作業中 確定した就航年は未提示 自律(搭載操縦士なし・地上が監督)

※数字は2026年10月時点。会社の目標は「目標」であって、当局が保証した就航日ではありません。

暁
暁
5段階と4フェーズ、数字が大きいほうが先に進んでいるんですか?
スカイ先生
スカイ先生
区切り方が会社ごとに違うので、数字だけでは比べにくいんです。私なら、何を終えて、次に何を確かめる段なのかを見ます。

ニュースの「認証」「初飛行」をどう読むか

eVTOLのニュースで混ざりやすいのが、言葉の「段階」です。

  • 申請・申請受理:認証の手続きを始めた出発点。合格ではありません。
  • 適合機(FAA-conforming aircraft)が飛んだ:認証試験に使う、設計どおりに作った機体が飛んだという意味。その機種が型式証明を取った、ではありません。
  • TIA(型式検査承認):当局が正式な検査・試験を行うための承認。日本の制度では「飛行試験開始確認書」にあたります。対象や範囲の確認が要ります。
  • 型式証明が発行された:機体の設計が承認された。ここが大きなゴールのひとつ。
  • 運航開始:実際にお客さんを乗せて飛ぶ。型式証明とは別に、運航会社の側の承認が要ります。

機体の側の審査(申請〜型式証明)と運航会社の側の承認(Part 135など)が並行し、両方がそろって運賃をとる運航になることを示す2本の流れ図

▲ 左の列はメーカーの審査、右の列は運航会社の準備。ArcherのPart 135取得(2024年)は、右の列の出来事。

私の場合、新しい機体のニュースに触れたら、まず「認証のどの段階か」を確かめます。次に「開発のどの段階か(どんな試験をしているか)」、そして「認証が前に進んだのか」。たとえば同じ「TIA」の見出しでも、Jobyなら、シミュレーターで行ったFAAの試験(2024年12月)、適合機を自社のパイロットが飛ばす試験(2026年3月〜)、FAAのパイロットが実機で行う正式な試験(3月の発表では「年内」の予定)と、中身がいくつにも分かれています。

もうひとつ、私が気をつけているのが「商用」という言葉です。見出しの「商用」は、機体の売買契約や商用化への準備など、いろいろな「商用」の一面だけを切り取っていることがあります。Archerが2024年に出した「商用エアラインの運航を始めるためのFAA認証を取得」という発表も、中身は従来型の航空機でしくみを整えるための証明で、Midnightを就航させるのは型式証明を取ってから、と同社自身が書いています。

型式証明が取れても、それだけでお客さんから運賃をいただいて飛べるわけではありません。米国のエアタクシーなら、運航会社がPart 135の運航証明を持ち、その機体を自社の運航に加える承認を受けてはじめて、航空運送事業として飛べます(日本でも、航空運送事業の許可や運航規程の認可が別に要ります)。

南雲
南雲
表にあったJobyの「2026年内に初の乗客」も、運賃を払って乗るお客さんとは限らないんですか?
スカイ先生
スカイ先生
会社の説明では、eIPPの飛行は操縦士だけ、運賃をとらない乗客、いずれ運賃を払う乗客、の順に進める見込みだそうです。最初の乗客がどの段になるかは、発表を見てからですね。

4社それぞれのいま|Joby・Archer・Beta・Wisk

いずれも2026年10月時点の、各社の発表とFAAの公表に基づく内容です。

Joby Aviation|機体はS4、6基の推進器を傾けて垂直から水平飛行へ移るティルトローター。操縦士が乗る有人機(操縦士1+乗客4を想定)です。FAAの「5段階」のうち第5・最終段階の作業を進めていると報告(2026年8月)。最初のFAA適合機が2026年3月に飛行を開始しました。トヨタが出資・提携の中心で、量産に向けた合弁にも言及。2026年内にテキサスで初の乗客を運ぶことを目標に掲げています(あくまで会社の目標)。

Archer Aviation|機体はMidnight。前の6基が傾転し、後ろの6基は垂直の揚力専用という「12基のうち6基が傾く」構成で、有人(乗客4を想定)。FAAの4フェーズのうちPhase3を2026年4月に完了し、Phase4で正式な試験と解析を進めています。UAE(アブダビ)での展開や、ロサンゼルス2028大会に向けた準備も進行中。2026年8月には、ボーイングからWiskなどを取得する契約も発表しました(契約の発表であって、取引の完了とは別の話です)。

Beta Technologies|機体はA250。4基の揚力用ローターと後部の巡航用プロペラ1基を分けた「リフト+クルーズ」方式で、有人。2026年10月、FAAから市場調査を目的とした特別な承認を受けました。ただしこれは商用運航を許すものではなく、見込みのお客さんを乗せたデモができるようになった段階です。完全な認証は2028年を見込むと会社広報が説明しています(報道ベース)。なお、滑走路から離着陸するCX300は別の機体なので、A250の実績とは分けて見ます。

Wisk Aero|機体はGen6。前6基が傾転、後6基が揚力専用に固定翼を組み合わせる構成です。ほかの3社といちばん違うのは、操縦士が乗らない自律飛行をめざしていること。地上の監督者が見守る仕組みで、「地上の操縦士がずっと手動で操縦する遠隔操縦」とは説明が異なります。ボーイングの完全子会社ですが、2026年8月にボーイングとArcherがWiskなどの売却契約を発表しており、所有関係は動いている最中です(この記事の時点では取引の完了は確認できないため、「すでにArcherの傘下になった」とは書きません)。

南雲
南雲
地上の監督者は、1人で1機ずつ見るんでしょうか?
スカイ先生
スカイ先生
1人で複数の機体を見る構想です。何機まで見られるのかは、まだ試している途中ですね。

「就航ゼロ」でも各社が違う理由|有人と自律・認証の入口

「まだどこも就航していない」という点では同じでも、操縦方式は違います。Joby・Archer・Betaは操縦士が乗る機体で、まず有人で型式証明を取ろうとしています。Wiskは最初から自律飛行をめざす機体です。自律は難しさの種類がちがうぶん、認証の道のりも別物になります。

実運航の検証に入る入口も、会社ごとに分かれます。JobyやArcherは、型式証明の作業と並行して、実際の環境で運航を検証するプログラム(eIPP)を進めています。Betaは市場調査目的の特別な承認から。

4社を「操縦士が乗って始める」3社と「操縦士なしで始める」Wiskに分け、各社がいま確かめていること(eIPP・市場調査・地上の監督)を添えた分類図

▲ 同じ「就航前」でも、いま確かめている中身がちがう。有人の3社は実際の空での運航、Wiskは地上から見守るしくみ。

私自身はパイロットとして、「自律をめざす」進み方にいちばん関心があります。理由のひとつは、パイロット不足です。世界の旅客・貨物の航空では、今後20年で約67万4,000人の新しいパイロットが必要と見込まれ(ボーイング・2026〜2045年の予測)、日本でも主要航空会社の操縦士を2030年に向けて約13%増やす必要があるとされています(国土交通省)。

この数字を見ると、エアラインに加えてeVTOLの操縦士まで継続して確保できるのかが、私には気になります。そこは、まだ見通せずにいます。運航を支える人の確保まで含めて考えると、はじめから自律をめざす設計にも魅力を感じます。

Wiskは、自律の利点として「パイロット不足の中でも運航を広げられること」を挙げています。ただ、その構想でも人の役割はなくなりません。地上の監督者が複数の機体を見守り、担当機の機長(PIC)を務めます(2026年のNASAとのシミュレーションでは1人で3機)。有人で進むJobyやArcherも、自律の技術に手を伸ばしています(Jobyは2024年に自律技術の部門を買い取り、Archerは2026年8月にWiskを取得する契約を発表。10月時点で完了待ち)。

将来の仕事として考えると、どの会社の進み方が気になるでしょうか。

暁
暁
進み方は分かってきたけど、どれに乗ってみたいかは、まだ迷います。

まとめ

eVTOLのニュースで確かめる5つのチェックリスト。認証の段階→開発と試験の段階→認証が進んだかの順に見て、「商用」の中身と日付が実績か目標かも確かめる

▲ 1〜3の順に見て、4・5で中身と日付を確かめる。答えが出ないところは「公表を確認できず」と置いておけばいい。

まとめ

  • 米国の主要eVTOL4社は、2026年10月時点で型式証明の取得も一般商用旅客就航もゼロ(各社IR・FAA)。
  • JobyとArcherは認証工程の後半(Joby=5段階の最終段階/Archer=4フェーズ中Phase3完了)。Betaは市場調査の特別承認、Wiskは自律飛行をめざす。
  • ニュースの言葉は段階で読む=「申請/適合機/TIA/型式証明/運航開始」は別物。
  • Wiskだけ操縦士が乗らない自律方式。所有関係はArcherへの売却契約が進行中(完了は別)。

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eVTOL時代ではどう変わるか

操縦士が機内に乗るJoby・Archer・Betaと、地上の監督者を置くWiskとでは、人が運航に関わる場所が変わります。どちらの形でも、安全を見届ける人の役割はしばらく残ります。私が次に追いたいのは、その人たちにどんな訓練や資格が求められていくのか、です。

30秒クイズ・考える問い

Q. 4社のうち、機体に操縦士が乗らない「自律飛行」をめざしているのはどこ?
A. Joby B. Archer C. Beta D. Wisk

(答え:D. Wisk。地上の監督者が見守る自律飛行をめざしています。ほかの3社は有人です。)

考える問い:あなたが利用者なら、「操縦士が乗っている機体」と「自律で飛ぶ機体」、どちらに先に乗ってみたいですか? まだ決めきれないなら、何が分かれば選べそうでしょうか。

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eVTOLは会社ごとに進み方がちがい、ニュースも日々動きます。気になった会社は、個別の記事でさらに深掘りしてみてください。

スカイ先生(朝霧)プロフィール

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