勉強の成果が見えないときの2つの目安|やった量と、身についたか

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今回のポイント:積み重ねは「やった量」と「身についたか」の2つの目安で、別々に確かめます。記録の研究と山口真由さんの本を見比べると、やった量の記録は行動を後押ししても、身についたかまでは教えてくれません。

皆さんは、使い切ったノートやボールペンを、捨てる前に少し眺めたことはあるでしょうか。山口真由さんの2014年の本『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』は、その「減った分」を努力の目印にしようと勧めています。

では、毎日続けているのに進んだ気がしない場面から考えてみます。

毎日続けても、進んだ気がしない

参考書を毎日5ページずつ進めているのに、模試の点はほとんど変わらない。

机に向かった日数は増えていくのに、手応えだけがついてこない。

成果が見えないのは、努力が足りないからなのでしょうか。

私がこの問いに引っかかったのも、似たところからでした。ブログの作成・発信を3か月弱やっているのに、閲覧数が伸びないんです。

企業の調査でも、手応えのなさは続かなかった理由に挙がっています(日本デザイン・2026年9月発表)。習慣化や学びに関心があり、挫折の経験がある224人のうち37.5%が、「成果・変化が見えず、手応えがなかった」を選んでいました(複数回答)。

全国の割合ではありませんが、手応えのなさで手が止まるのは、珍しいことではなさそうです。

努力が報われるか分からない不安は、山口さんの本にも出てきます。

本の答えは「減っていく道具」

山口さんの本の第四章によると、努力を続けていると、「果たしてこの努力は報われるのだろうか」という不安が、ふと頭をよぎる。山口さんの答えは、こうです。

それを避けるため、努力は必ず形に残していかなければならないというのが私の持論です。形に残らないと、不安が募ってしまう。

(山口真由『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』第四章 方法32「道具を「ひとつ」にこだわること」)

形に残すといっても、山口さんの道具はごく身近なものです。黄色い紙のメモパッド、リーガルパッドを、書いては破って捨てていく。パッドが少しずつ薄くなっていくのが、目で見て分かります。

ボールペンも、使い切りの安いものを1本だけ使うのがいいそうです。いくつも同時に使うと、なかなか使い切れないからです。

インクが減った分、自分が努力をしたことがわかります。

(山口真由『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』第四章 方法32「道具を「ひとつ」にこだわること」)

この一文を読んで、私が最初に思ったのは、小さな成功・成長に気づけてそれを目標にできるかが大切、ということでした。

もう1つの工夫は、数字のほうにあります。毎朝、試験のテキストを5ページ読むとします。

しかしこの「5」という数字ですが、こういった少ない数をいわれてしまうと、毎日こなしていても、全然進んでいないような気がしてしまいます。

(山口真由『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』第四章 方法33「数字を正当に“偽造”する」)

この記事の問いと、ほとんど同じ言葉ですよね。

そこで山口さんは、1行40文字・16行の本なら1ページは640文字、5ページで3200文字、と数え直します。「毎朝5ページ」を「毎朝3200文字を読む」と書き換える、数字の正当な「偽造」です。

なお、この3200文字は2014年の単行本の組み方で計算した数で、読む本が変われば、1ページの字数も変わります。

本の基本情報
書名:『天才とは努力を続けられる人のことであり、それには方法論がある。』
著者:山口真由(東京大学法学部を首席で卒業し、財務省を経て弁護士に。今は ZEN大学の教授)
出版社・発行:扶桑社・2014年1月(のちに新書・文庫になり、文庫は2024年11月)

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記録すると、何が進むのか

山口さんが「努力の結果が見えるように」と書くときの結果は、減ったインクや薄くなったパッド、つまり、やった量のことです。試験の点や合否のような、成果のことではありません。

では、やった量を記録すると、成果まで変わるのでしょうか。

進み具合の記録について、138本の研究をまとめた分析があります。参加者は約2万人です(Harkin ほか・2016年・Psychological Bulletin)。

みお

みお
勉強した時間でも、試験の点でも、記録さえしておけば、同じように進むものなんでしょうか?

意外にも、この分析では、何を記録するかで進むものが違っていました。

やった行動を記録した研究では、運動や食事といった、その行動ははっきり増えました。一方、体重のような成果への効果は、確認できませんでした。

成果を記録した研究では、成果への効果が確認されていました。この2つの結果は、論文が受理されたときの原稿で確かめたもので、行動を記録して成果まで測った研究は8本と少なめです。

全体としては、進み具合を確かめるよう促されると、確かめる回数が増え、目標の達成も進みました。効果の大きさは、研究の世界の目安で「小さい」と「中くらい」のあいだです。

紙に書くなど、形に残して記録したときのほうが、効果は大きくなっていました。ただ、この分析に集まった研究は、運動や体重など健康の目標が多く、勉強だけを調べたものではありません。

また、書き残す記録と、ペンやパッドの減りを目印にする方法は別で、道具の減りそのものを調べた研究も、見当たりませんでした。

本に当てはめるなら、減ったインクは「やった行動の記録」に近いものです。ただし、続ける目印になるというのは、山口さんの方法としての位置づけです。身についたかどうかまでは、インクの減りからは分かりません。

やった量と身についたかは別に見る

勉強の積み重ねを確かめる目安を、この記事では2つに分けて考えます。

1つ目は、やった量です。読んだページ数、机に向かった時間、使い切ったボールペン。山口さんの方法は、ここを形に残す工夫でした。

2つ目は、身についたかです。たとえば、先週読んだ節を、本を閉じたまま説明できるか。時間を置いて、見ずに問題が解けるか。

読むときの注意

この分け方も確かめ方の例も、この記事での整理で、研究が手順として確かめたものではありません。

毎朝5ページ、3200文字を読んだことと、翌週その5ページを見ずに説明できることは、同じ勉強の別の顔です。前者は毎日たまっていきますが、後者は、毎日少しずつ増えるとは限らないんですよね。

読んだ量よりも、見ずに説明できるかが気になるなら、量の記録だけでは確かめられません。

学習の振り返りについて、文部科学省の有識者会議のまとめ(2025年2月)は、習得度の評価に加え、学習した事実の蓄積にも触れています。子どもの学びでは、「学習した事実を蓄積して意欲を維持させる観点」も大事だ、という書き方です。

みお

みお
勉強以外のことでも、やった量だけでは手応えが分からない、ということはあるんでしょうか?

勉強以外のことでいうと、私の場合、44本のブログ記事、毎日最低3時間を3か月、休みの日は6時間くらいやっています。

それでも、閲覧数は伸びていないんです。

閲覧数は、勉強でいう「身についたか」とは別のものです。文章を書く力が身についたかどうかも、閲覧数だけでは分からないんですよね。勉強と共通するのは、やった量が増えても、それだけでは手応えにつながるとは限らない点です。

そんな私がやった量の目印にしているのは、物ではなく、毎日時間を決めてその時間だけでもこつこつやっていること自体です。使い切るペンの代わりに、続けた時間が目印になっている形ですね。

数字を大きくすれば頑張れるのか

山口さんの「3200文字」のように数字を大きく書き換えれば、気持ちは本当に変わるのでしょうか。

私自身は、文字を読むこと自体に意味を探してしまいそうです。でも、そういった少しでも続けやすいきっかけがあって、それを継続することで自分の成長を感じることができれば、それが幸せだと考えています。

達成目標を文字数でカウントするのも、目標としては十分だと思います。ただ、本を読むという目標を掲げている以上、その目的があって、その目的に沿った目標になっているほうがいいかと思います。本質を忘れてはいけない、つまり、本を読む目的と文字数で目標を測ることがリンクしていれば十分かと思います。

数字の見せ方で選び方が変わるかを調べたのが、買い物の研究です。

同じ保証でも、「7年保証」より「84か月保証」と書いたほうが、ほかの商品との差が大きく見え、選ばれやすくなる。人が単位より数字の大きさに目を向けるからです(Pandelaere ほか・2011年)。

ところが、別の単位でも言える、と思い出させると、この効果は消えました。

ただ、商品の選ばれ方が変わることと、勉強で努力が増えることは別です。

努力のほうは、インドの大学生1,235人で確かめた実験があります(Arora ほか・2026年・Economics Letters)。同じテストを20点満点で示しても100点満点で示しても、得点にも、努力の度合いにも、意味のある差は出ませんでした。

自分で換算した「3200文字」は、元が5ページだと、自分がいちばんよく知っています。買い物の研究でいえば、効果が消えた条件に近いのかもしれません。とはいえ、自分で読む量を換算したときの続けやすさを、直接調べた研究ではありません。

山口さん自身も、5ページのままで「努力する気を保てるのであれば、それでかまいません」と書いています。読む量そのものは、5ページでも3200文字でも同じです。

目安を2つ、別々に決める

この記事の結論

ペンの減りや読む量の数え直しは、やった量を見える形にする工夫でした。やった量は、使い切った道具でも、続けた時間でも残せます。身についたかは、時間を置いて説明できるか、問題が解けるかで、別に確かめます。

このほか本には、毎日の中に自分で小テストを仕掛けて、そこで合格点を取ることに励む、という話もあります(第二章 方法15「毎日に小テストを仕掛けよう」)。

ルールに例外を先に作る「抜け道」の話は、同じ本から書いた一度サボるとやめてしまう人へ|例外を先に決めるルールの作り方にまとめました。

私の飛行の記録も、やった量を残すものです。操縦士が使う、ログブックという記録です。

ログブックが何冊にも積みあがっていきます。過去のログブックを見て、こんなことを振り返ると感慨深いです。

  • どこに行ったな
  • この日は出発地と着陸地が同じだな(引き戻したんだな)
  • 審査をやったんだな(あの審査官は、お世話になったけどまだ元気かな)
  • 機長での初フライトはここだったな

操縦士の資格の試験では、200時間以上の飛行時間などが受験の条件です。合否は、原則として学科試験と実地試験で決まります(事業用操縦士の場合。航空法施行規則 別表第二・航空法第29条)。積み上がったログブックはやった量の記録で、身についたかは、また別の場で確かめられます。

やった量は何で残し、身についたかは、いつ、何で確かめるのか。

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