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この記事で分かること
| 対象 | パイロットを目指す中高生・大学生/進路を考える社会人・保護者 |
| 難易度 | ★★☆(お金の話を、やさしく) |
| 所要時間 | 約7分 |
| 読むと分かること | ①公表されている平均年収と、その「読み方」 ②エアライン・エアライン以外・自家用で変わる収入の中身 ③訓練明けから機長までの段階 |
はじめに
「パイロットって、年収どれくらいなんだろう」——進路を考えはじめると、一度は気になるところだと思います。調べると、平均年収の大きな数字が並んでいて、なんとなく高そう。でも、その数字が自分の将来にそのまま当てはまるのか、正直つかみにくいですよね。
というのも、よく見かける平均には、ベテランの機長も、乗り始めたばかりの副操縦士も、大手も地域の会社も、ぜんぶ混ざっています。だから「平均=自分が最初にもらう額」ではありません。
「最初にどれくらいもらえるのか」と「将来どこまで上がるのか」は、別々の数字です。このあと、仕事の種類と経験の段階に分けて、公表されている数字がどこまでを表しているのかを並べていきます。
私自身も副操縦士から機長まで歩いてきたので、数字がどう動いたかは、途中で紹介します。
結論(先に一言)
パイロットの年収は、「いくら」と一言では言えません。職種(エアラインか、それ以外の操縦の仕事か、自家用か)と、経験の段階(訓練生・副操縦士・機長)で、大きく変わるからです。
公表されている職業全体の平均は、約1,631.8万円(厚生労働省の職業情報サイト、平均年齢39.7歳)。ただしこれは会社も職位も年齢も混ざった平均で、「機長はいくら」「副操縦士はいくら」を会社別に示した公表統計は、見当たりませんでした。
パイロットの年収、まず知っておきたい「平均のワナ」
厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)は、「航空機操縦士」という職業の全国平均年収を約1,631.8万円としています(賃金構造基本統計調査 2025年版、平均年齢39.7歳)。たしかに高い水準です。
ただ、この数字にはいくつか前提があります。
- 「平均」であって「真ん中(中央値)」ではない。一部の高い人が平均を押し上げている可能性があります。
- 会社も職位も混ざっている。大手もLCCも、機長も副操縦士も、ひとまとめの平均です。
- 自分がいつ受け取る額かは別。平均年齢は39.7歳。ある程度経験を積んだ人まで含んだ数字です。

▲ 1本の平均の中に、会社・職位・年齢の違いがまとめて入っている。
公表された平均そのものではありますが、入社直後の給与を表す数字ではありません。


職種で見る:エアライン・エアライン以外・自家用
収入の中身は、どんな操縦の仕事に就くかで変わります。
① エアライン(航空運送事業)
数字がいちばん見えやすいのはここです。JALが公式に出しているESGデータでは、JALグループ連結の「運航乗務員」の平均年間給与が、2025年度で2,152.7万円でした(2024年度は2,005.1万円)。ただしこれも、機長と副操縦士を分けた数字でも、日本航空1社だけの数字でもありません。ANAについては、操縦士だけの平均を公式資料から確認できなかったので、ここでは数字を出しません。
② エアライン以外の操縦の仕事
遊覧飛行、報道・撮影、航空測量、農薬散布、ドクターヘリ——旅客機のほかにも、操縦の仕事はいろいろあります。ここは「事業用操縦士」という資格が活きる領域です。ただし、これらの用途別に平均年収を示した公表統計は見当たりませんでした。会社ごとの募集条件は見つかりますが、それはその会社の条件で、業界全体の平均とは別ものです。
③ 自家用(自家用操縦士)
自家用操縦士は、ここまでの給与の話とは前提が違います。「年収」で比べる区分ではありません。航空法の別表で、自家用操縦士の仕事の範囲は「報酬を受けないで、無償の運航を行う航空機の操縦」と決まっているからです。操縦でお金を受け取ること自体が、範囲の外。収入を得て飛ぶなら、事業用操縦士以上が必要になります。

▲ 数字が見える職種と、公表統計がない職種がある。自家用は年収で比べる区分ではない。
⚠ 注意:「事業用」はエアライン以外という意味ではない
ひとつ、混ざりやすい言葉を整理しておきます。「事業用操縦士」は”エアライン以外”という意味ではありません。所定の条件のもとでは、航空運送事業の副操縦士として飛ぶのも事業用操縦士の範囲に入ります。資格の名前と、就職先の種類は、別の軸なんですね。
年齢と経験で見る:訓練明けから機長まで
同じエアラインでも、入ったばかりの人とベテランでは収入が違います。動くきっかけは、年齢そのものより「どの段階にいるか」です。

自社養成で入ると、まず会社員として給与を受け取りながら訓練します。公表されている募集条件では、ANAの2027年度採用「運航乗務職」が月額267,770円(大卒・高専専攻科卒)、JALの2027年度入社「運航乗務員訓練生」が月額263,000円です(いずれも募集要項の金額で、平均でも年収でもありません)。「訓練中は無給」と一括りにはできませんが、私の場合、訓練生のころの収入は正直なところ思っていたほどではありませんでした。
その後、副操縦士に上がったときは、あっと驚くくらい増えました。私の知る範囲では、大手のエアラインなら副操縦士になった時点で年収1,300万円を超え、系列のLCCや中堅のエアラインでも1,000万円を超えてきます(副操縦士だけの年収を公表している会社は見当たらないので、ここは私の経験からの目安です)。乗務を始めると、基本の給与に乗務手当などが積み重なっていくからです。厚労省の職業情報でも、給与は基本賃金と乗務手当からなり、職位や経験年数で変わると説明されています。そこから先は、経験を重ねるごとに少しずつ増えていく感覚でした。
審査を通って機長になると、変化はもっと目に見える形になります。私の場合は、毎月振り込まれる金額が3桁、つまり100万円を超えるようになりました。副操縦士のころは少しずつだったのに、機長になると社内で取る資格が一気に増え、取るたびに収入も大きく上がっていきました(教官や審査役などに手当を付ける会社もありますが、中身は会社ごとに違います)。機長の経験は他社からも求められるので、待遇を比べて転職を考える機長も出てきます。私にとって機長への昇格は、収入が増えたことに加えて、その先の働き方を考える機会にもなりました。
どのエアラインに入るかを考えるとき、私なら、その会社で機長になるまでにどれくらいかかるのかも見ます。機長になってから、年収も、働く場所や環境の選び方も変わってくるからです。目安を公表している会社もあります。ANAは「副操縦士任用後、機長になるまでには約10年」としていて、グループのANAウイングスは、副操縦士として約6年乗務したあと、約6か月の訓練と審査を経て機長になる流れを示しています。
もうひとつ、将来の選択肢を考えると、私はボーイングかエアバスの機体を運航しているエアラインのほうが良いと思っています。世界で飛んでいる商用機の約8割はこの2社の機体で(IATA、2025年6月時点・貨物機を含む)、他社の経験者採用にも、A320の型式限定を条件にした副操縦士の募集があります(スターフライヤー、2026年9月)。
補足:年齢別の金額を載せていない理由
年齢別の具体額(「25歳でいくら」など)は、統計の表はあるものの、私はまだ原表の数字を確かめられていません。なのでここでは、段階を上がるごとに増えていく構造のほうをお伝えしています。

▲ 上から訓練生→副操縦士→機長。黄色の文字が、各段階の金額の目安です。
モデルケースで考える「自分の場合」
同じ「パイロットの年収」でも、気になるところは立場で違います。高校生、訓練生、30歳の社会人の3人を例にします。
高校生のタクミさん——「高そうだけど、本当?」
「そんなにもらえるの?」と思う一方で、入社したばかりの収入も気になっています。よく見かける平均は、経験を積んだ人まで混ざった数字です。働き始めはもっと控えめなところから始まり、副操縦士、機長と上がるごとに増えていきます。
訓練生のミサキさん——「訓練中の生活は成り立つ?」
自社養成で入ったミサキさんの関心は、将来の機長の額より、まず足元です。公表されている募集条件では、訓練中も月額26〜27万円台の給与が出ます。家賃を払ったあとにいくら残るかは、住まいや手当の条件次第です。
30歳で転職を考えるケンジさん——「元は取れる?」
自費で資格を取る道も考えているケンジさんが気にしているのは、費用対効果です。資格を取っても、エアラインの就職が約束されるわけではありません。「元は取れる?」の計算には、就職したあとの年収のほかに、そこまでにかかる費用と、就職できるかどうかが入ってきます。

そう聞かれると、私も簡単には言葉を返せません。お金だけを理由に目指す道が閉じてしまうのは惜しいと私は思います。ただ、どこまで費用をかけられるかは、それぞれの生活によって違います。
働いて費用をため、また飛ぶ。そうやって少しずつ飛行時間を重ねている人もいます。海外で飛行教官として働く道もありますが、働ける条件や期間は在留資格で決まります。ほかの仕事なら前の職場での経験が物を言うところ、パイロットの場合は、国土交通省に出す飛行経歴書(航空経歴書)に書く飛行時間と資格が、そのまま経験の証明になります。
年収は会社によって違い、公表されている運航乗務員の平均でも数百万円の差があります。私の場合は、乗務を始めてから収入への不安がかなり小さくなりましたが、同じように言えるかは、会社の待遇や訓練費用の返済額によっても違うと思います。20代で大型機の国際線を飛ぶ道だけが、パイロットのすべてではありません。

▲ 高校生は平均の中身、訓練生は足元の生活、社会人は費用対効果が気になるところ。
まとめ
この章の要点
- パイロットの年収は「いくら」と一言では言えない。職種と経験の段階で大きく変わる。
- 公表されている職業全体の平均は約1,631.8万円(混ざった平均・平均年齢39.7歳)。機長/副操縦士別・会社別の公表統計は見当たらない。
- エアラインはJAL公式で運航乗務員の平均が見える(2025年度2,152.7万円)が、機長/副操縦士別ではない。エアライン以外の操縦の仕事は用途別の公表統計がなく、自家用は報酬を受けない=年収で比べる区分ではない。
- 訓練生(募集条件で月26〜27万円台)→副操縦士→機長と、段階を上がるごとに増える。私の知る範囲では、副操縦士になった時点で大手は1,300万円超、系列のLCCや中堅でも1,000万円超(公表統計ではなく経験からの目安)。
- 同じ「年収」でも、どの母集団の・どの段階の数字かで意味が違う。
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eVTOL時代ではどう変わるか
将来、空飛ぶクルマ(eVTOL)の操縦が仕事になっても、「報酬を受けて飛ぶなら事業用操縦士以上」という考え方は変わりません。新しい乗り物でも、職種と経験の段階で収入が変わる、という形はそのまま当てはまりそうです。
30秒クイズ・考える問い
Q1. 「航空機操縦士」の全国平均年収(約1,631万円)は、入社してすぐにもらえる額でしょうか?
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いいえ。会社も職位も年齢も混ざった平均で、平均年齢は39.7歳。スタートはもっと控えめで、段階を上がっていきます。Q2. 自家用操縦士は、報酬を受け取って遊覧飛行を操縦すれば収入になるでしょうか?
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いいえ。自家用操縦士の範囲は「報酬を受けないで、無償の運航を行う航空機の操縦」。収入を得て飛ぶには事業用操縦士以上が必要です(航空法 別表)。考える問い:あなたが気になっているのは「最初にいくらもらえるか」ですか、それとも「将来どこまで上がるか」ですか。どちらを知りたいかで、手がかりになる数字は別のものになります。
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– 「航空大学校卒が副操縦士になるまで|教える側から見た訓練のリアル」(#104)——訓練の段階と、時間の感覚。
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