
この記事はアフィリエイト広告(Amazon・楽天・Yahoo!ショッピング)を利用しています。記事内のリンクから購入されると、当ブログに紹介料が入ることがあります。
今回のポイント:胸を張っても服を整えても、変わるものと変わらないものがあります。有名な「2分のパワーポーズ」を、見られ方・自分の感じる自信・体の中の変化に分けて、今の研究と照らします。
面接や大事な場面の前に、「もっと堂々として」と言われた経験はないでしょうか。胸を張る、声を張る、きちんとした服を着る。そうすれば本当に自信がついて、堂々と見えるのか。この本は、その問いに真正面から答えようとします。
それでは、姿勢やポーズ、服装のどこまでが「本当」なのか、順番に見ていきます。
胸を張れば、自信はつくのか
「自信がなさそう」と言われても、気持ちだけで変えるのは、なかなか難しいものです。
そこでこの本は、気持ちではなく体のほうから変えられる、と説きます。姿勢やポーズ、手の動き、服装といった、目に見える部分です。
ただ、ひとくちに「体を変える」と言っても、変わる先は一つではありません。他人から強そうに見えること、自分が自信を感じること、体の中(ホルモンなど)が変わることは、いっしょに動くとは限りません。本の助言のどこまでが確かなのかは、この3つを分けると見えてきます。
本は姿勢と服で変わると言う
本の土台は、人を「強さ」と「温かさ」の2つではかる、という見方です。そして、その強さは体の使い方に表れると言います。
背筋がピンと伸びた姿勢は「強さ」を感じさせます。(中略)胸を張って堂々と立つ姿は、本人の自信を物語るものです。
(『人の心を一瞬でつかむ方法』ネフィンジャー、コフート 訳 熊谷小百合/PART3「背筋を伸ばすだけでガラリとイメージアップ」)
空間を広く使うほど強く見え(PART3「空間を支配する身のこなし」)、フォーマルな服ほど強い印象を与える(PART3「ファッションとイメージの気になる関係」)。本は、こうした「見せ方」を一つずつ挙げていきます。
なかでも有名なのが、2分間のポーズでホルモンまで変わる、という話です。
この本の基本情報
『人の心を一瞬でつかむ方法』
著者:ジョン・ネフィンジャー、マシュー・コフート(訳 熊谷小百合)
出版社・発行:あさ出版・2015年5月(手元は2015年版)
📚 この本をチェックする
2分でホルモンは変わるのか
本は、姿勢を変えればホルモンが動き、自信が呼び起こされると書きます。
意図的に姿勢を変えることによって、ホルモンレベルの変化を促し、自信を呼び起こすことができるのです。(中略)最初は「ハッタリ」でもかまいません。自信満々な「ポーズ」を取り続けるうちに、やがて「本物の自信」が芽生えてくるのです。
(『人の心を一瞬でつかむ方法』ネフィンジャー、コフート 訳 熊谷小百合/PART3「ハイパワーなポーズをとるだけで強くなれる」)
この「ハッタリでもいい」という一文について、私はこう感じました。体の形も大事だけれど、そうは言っていられない場面もある。そういうときは、ゆっくり低い声で話し、笑顔で接することで、落ち着いている印象を与えられるのではないか。
この話のもとになった研究(Carneyほか・2010年)は、42人を対象にしたものでした。その後、200人規模で行われた追試(Ranehillほか・2015年)では、ホルモンの変化も、リスクを取る行動も、再現されませんでした。再現できたのは、「自分で力がわいてくる感じがする」という主観的な感覚だけだったのです。
もとの研究者の一人は2016年に、自分の研究から距離を置く声明を出しています。さらに、事前に手順を公開して行われたまとめ(Körnerほか・2022年/88の研究・約9,800人)があります。そこでも、自己申告の感覚には効果がある一方、ホルモンなど体の指標には効果の証拠はない、という結果でした。
つまり、追試とまとめで確かめられたのは「自分で力がわいてくる感じ」までです。体の中(ホルモン)の変化は、確かめられませんでした。ただ、この感覚を、本が言う「取り続けるうちに」芽生える「本物の自信」と同じものとして扱うことはできません。
服を変えると何が変わるか
次は服です。本は、フォーマルな服ほど強い印象を与えると説きます。また、服を着た本人に起きる変化として、白衣を着ると集中力を要するテストで誤答が減る、という実験も持ち出します。
ただ、この白衣の実験(Adamとガリンスキー・2012年)も、事前に手順を公開した直接の追試(Burnsほか・2019年)では再現されませんでした。
その後、元の研究者自身も加わったまとめ(Hortonほか・2023年/40の研究・約3,800人)は、初期の研究の再現性に懸念を示しました。一方で、2015年より後に発表された研究については、着た人の考えや気持ち、行動への影響を支持する証拠がある、という結論です。
テストの結果とは別に、着た本人がどう感じるかを尋ねた調査もあります。フォーマルな服を着ると真剣になる・自信が出る、と答える人が多い、という調査(Raduanほか・2026年/大学生312人への質問紙)です。ただしこれは、本人がそう感じていると答えた調査で、服を変えて成績が上がるかを確かめた実験ではありません。
私自身、制服に着替えると、やはり会社の一員という気持ちになりますし、周りからも会社の人として見られていると感じます。制服を着る責任と、その重みのようなものも感じます。
服の話の締めくくりに、本が置くのはこの一文です。
服装に関する最終的な結論を導き出すとすれば、「その服を着たときにどんな気分になるかという点」に注意を払うべきでしょう。
(『人の心を一瞬でつかむ方法』ネフィンジャー、コフート 訳 熊谷小百合/PART3「ファッションとイメージの気になる関係」)
本が最後に置くのは、成績ではなく「気分」のほうです。白衣を着て受けたテストの結果と、着た本人が答えた気分は、測っているものが違います。
仕草ひとつで信用は決まらない
姿勢や服の次に、本は「信頼を損なう4つの仕草」を挙げます。腕組みや、顔や手を触る動きなどです。ただ、本は、仕草と不信感が直結するわけではない、とも断っています。
それぞれの仕草が不信感と直結するわけではないものの、私たちの脳はこれらの四つのジェスチャーを警戒信号と見なしています。
(『人の心を一瞬でつかむ方法』ネフィンジャー、コフート 訳 熊谷小百合/PART3「どうして非言語シグナルがより人格を表すのか?」)
これは、見る側の受け取り方の問題でもあります。腕組みをして話を聞く人は、横柄に見えたり、自分からバリアを作っているように見えたりしがちです。けれど、それを「自信がなさそう」「信用しにくい」と感じてしまうのは、見るほうの見方しだいでもある。人は見た目によらない、というのが私の考えです。
姿勢で変わるのは気分まで
ここまで、胸を張ることや服を整えることを、研究と照らしてきました。姿勢については、自分で力がわいてくる感じ(自己申告の感覚)に変化が報告されています。一方、ホルモンの変化や、白衣を着たときのテストの成績は、この記事で紹介した追試では再現されませんでした。
意味がない、とまでは言えません。「自分で力がわいてくる感じ」は、研究でも報告されている変化だからです。ただ、それより先の、ホルモンの変化までは確かめられていません。服についても、着た本人の気分と、テストの結果や周りからの見られ方は、別の話です。
私の場合は、特別なことはせず、いつもと同じを意識しています。むしろ、ふだんから適度な緊張感をもってフライトに臨むようにして、「笑顔は忘れずに」をモットーにしています。
なお、本は、声についても「じっと座ったままの姿勢では、力のある声は出せません」(PART3)と書いています。声と話し方の面から「頼りなく聞こえる」を扱った記事も、この連載の別の回にあります。
📚 この本をチェックする
